2014年1月27日月曜日

愛に乱暴

吉田修一著
新潮社

不倫。ダメ、ゼッタイ!誰にも共感できないが、思わず引き込まれてしまう不倫小説。




この「愛に乱暴」は、一言で言うと夫が浮気し、その愛人が妊娠してしまう不倫小説である。

物語は、妻と浮気相手の女、交互の視点から語られていく。
主人公の初瀬桃子は、結婚を機に大手企業を退社し、現在週に一回カルチャーセンターの講師をしている。
義父母と同じ敷地内に住み、自分ではうまくいっていると思っていた矢先、夫の浮気が発覚する。

浮気相手の奈央は男の都合のいい言い訳を真に受け、自分のことは棚にあげて「妻が悪い。男がかわいそう。」と思い込んでしまう。
結婚しているとわかっている男とそういう関係になった時点で、もう同情できない。

そして、最悪なのが夫である。
浮気したことの謝罪も説明もせず、優柔不断で妻を蔑ろにしているサイテーな男である。
しかも、浮気なのに相手を妊娠させるなんて、「避妊くらいしなさい!最低限のルールでしょ!」と、どやしつけたくなってしまう。

夫が浮気し、相手が妊娠、舅・姑も絡んで・・・というと、ドロドロの昼ドラのようだが、吉田修一さんの不倫小説はちょっと違う。
昼ドラほどドロドロしているわけでも、大げさな事件が起こるわけでもない。
それでも、日々の細々とした出来事が丁寧に生々しく描かれていて、全般的に何かがヒタヒタと迫ってくるような不穏な空気が流れていて、不気味なのである。

当初は私も一応妻という立場なので、「妻がかわいそう。それは夫が悪い!」と怒りながら読んでいたのだが、この妻がなぜかチェーンソーを購入し始めた頃から、「あれ?ちょっとこの人、おかしいかも?」と感じ始めた。
そして、中盤あたりに巧妙な仕掛けがあり、えっ!と驚き頭を整理しなくてはならなくなった。

そうか、そうだったのか。
そうなってくると、もう本当に登場人物の誰も彼もが嫌になってくる。
それなのに、読むのを止められないのだから、さすが吉田修一さんだなぁ。

でもやっぱり、乱暴な愛はイヤだ~!
穏やかな、優しい愛が一番だ~!
と私は思うのだ。

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