小田雅久仁著
新潮社
本棚に見慣れない本が突然現れたら・・・それは本の子供「幻書」かもしれません。
本にも雄と雌があり、子供まで産む。
そうやって生まれた本を祖父は「幻書」と呼んだ。
しかも幻書は、鳥のように羽ばたきながら飛ぶのだ。
祖父の家に泊まった時、「書物の位置を変えるべからず」との掟を破り、
エンデの「はてしない物語」を、カミュの「異邦人・ペスト」とサルトルの「嘔吐・壁」の間に
不用意に押し込んでしまった。
すると翌朝、「はてしなく壁に嘔吐する物語」という本が生まれてしまった!
そんな体験をした博が息子に、大学教授で書物蒐集癖のある祖父・輿次郎と女流画家の祖母・ミキを始めとした家族や幻書について語った物語である。
「あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある。であるからには理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページをからめて房事にも励もうし、果ては後継をもこしらえる。」そんな文章から始まる本書は、あまり区切りがなくぎっしり詰まった活字、そして癖のある文章が延々と続くので、読み始めは戸惑ってしまった。
また、合間合間に本気なんだか冗談なんだかわからないような言葉やダジャレが頻繁に挟まれ、話もあっちへ行ったりこっちへ行ったりと脱線し、困惑してしまう。
しかし、すぐにその語りかけるような独特の文章にも慣れ、そのうちニヤニヤ・クスクス、その後声を上げて笑うようになっていた。
まるで、バカバカしい冗談を言い続けている人の話を聞いているような気分で読んでいた。
おかしいだけでなく、戦争中の話、不思議な話、様々なエピソードが積み重なり、読み手を遠くの広い世界へと連れて行ってくれる。
どこが本筋なのかよくわからないまま、笑ったりホロリとしたりしていると、最後には大きな感動が待っていた!
幻書を題材に、点が線になりそのうちどんどん広がって最後はボルネオまで・・・
そんな本と家族への愛にあふれた、温かいファンタジーだった。
※なお、この本を読み終わると、
・本棚に見慣れぬ本があるか確認したくなる。
・本の並び方を考えてしまう。
・死後、ボルネオに行きたくなる。
・象を見ると足の本数を確認してしまう。
・しゃっくりが出る度に、100年もしゃっくりが続いたらどうしようと心配してしまう。
などの症状が出ますのでご注意ください。
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