2013年3月15日金曜日

私にふさわしいホテル

私にふさわしいホテル
柚木麻子著
扶桑社

作家はつらいよ。新人作家の悲喜交々。



本書は、新人作家が数々のトラブルにも負けず奮闘する姿を描いた痛快な文壇業界小説である。

主人公の加代子は、文学新人賞の大賞を受賞した。
それなのに同時受賞したアイドル女優ばかり注目され、加代子は全く話題にならず受賞作も出版されない。
しかし、加代子はひるまない。
あの手この手で作家の階段を昇っていくのだ!

新人作家は実力のみでのし上がるのは難しい・・・らしい。
だから加代子は執念とハッタリでチャンスをむしり取っていくのだ。
小説家らしく臨機応変に作り話を創作し、持ち前の演技力で熱演する。

山口瞳が「小説家のためのホテル」と称した山の上ホテルに有名作家気取りで自腹でカンヅメになったり、文壇の重鎮でいくつもの文学賞の選考委員を務めているベテラン作家に喧嘩を吹っかけたりと、後先考えずに突っ走ってしまう。
大学時代に演劇部で培った演技力を活かし、ホテルの従業員に扮したり、泣き落し作戦をしたり、
カリスマ書店員には媚を売ったりと八面六臂の(?)大活躍。
そんなことしている間に執筆でもしたら?とは言わないでおこう。

ちょっとやりすぎでは…と思う箇所もたくさんあるけれど、前向きな加代子を応援したくなる。
ビ○リ○シリーズの栞○さんより、よっぽど好きなタイプだ。

新人作家は、
 執筆は孤独で地味な作業。
 原稿料が激安なのでバイトしなければ暮らしていけない。
 ネットや書評家の批評に耐えねばならない。
 売れれば編集者のお手柄、売れなければ作家本人のせい
など、そんな愚痴のような描写は著者の経験から来ているのだろうか。

また、実在の人物や出版社を彷彿させる箇所は、
 この女好きの重鎮作家は○辺○一氏?
 この美少女は○矢り○さん?
 ○プ○大賞はやっぱりやらせ?
などとどうしても想像してしまう。
挙句の果てには朝井リョウさんなんてキザったらしい男として実名で出てくるのだ。
ここまで書いても大丈夫なのだろうか。
出版業界を敵に回してないだろうか。

読者としては作家の世界を垣間見たような気分でとても楽しめたのだが。

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