2013年1月25日金曜日

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件
湊かなえ著
集英社

架空のSNSサイトと連動させた新しい試みの小説。



美人OLがメッタ刺しにされ燃やされるという事件が発生した。
被害者が「白ゆき」という洗顔石鹸が大ヒットした化粧品会社に勤めていたため、「白ゆき姫殺人事件」と話題になった。
フリーライターが関係者にインタビューをするという形式で始まるこの物語。
同僚やかつての同級生などが噂や憶測で次々と証言していく。
それぞれが、ツイッターのようなものでつぶやいていくうちに、一人の女が容疑者として浮上した。
果たしてその女が本当の犯人なのか・・・?

実験的な小説を次々と発表している湊かなえさん。
本作でも新たな手法に挑戦している。
「小説すばる」で人々の証言を連載し、WEB文芸の「レンザブロー」(集英社)では架空のSNSサイトの書込みや雑誌・新聞の記事を載せ、二つの異なる媒体を連動させることにより臨場感を演出していた。

本書はそれを一つにまとめたもので、巻末につぶやきや記事が資料として収録されている。
うっかり先に資料を読むとネタばれしてしまうので、いちいち該当箇所を探して読まねばならなかった。
章ごとに必要な資料を添付する形式にすればもっと読みやすくなるのではないだろうか。

内容的には湊さんらしい「善意と悪意の狭間」が描かれている。
憶測が噂になり、そのうち断定的に語られていく様子に怖さを感じた。
自分の記憶で作られる過去と、他人の記憶で作られる過去。
一つの出来事でも、人によって見方が違う。
一人の人間でも、人によって印象が違う。
その違いから噂がひとり歩きしていく過程が、現実味を帯びていてリアルな恐怖を感じるのだ。

もし私が週刊誌に載るような事件を起こしたら、周りの人達は「まさかあの人が」と言いながらも「そういえばこんなことがあった。今から思うと・・・」と証言するのだろうか。
ちょっと心配になってきた。

湊さんにはいつか実験的な手法でなく、正攻法の重厚な長編小説を書いてほしいなと願う。

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