2013年1月14日月曜日

テーオバルトの騎士道入門

テーオバルトの騎士道入門
斉藤洋著
理論社


竜の涙を手に入れぬかぎり一人前の騎士とはいえないのだ。なぜなら「騎士道入門」にそう書いてあるから!
 
 


今年70歳になる男爵は、一人息子が戦死してからめっきり老け込んでしまった。
孫の テーオバルト 15歳に早く跡を継いでもらいたいと考えている。
しかし、「騎士たる者は、竜の涙を手に入れぬかぎり、一人前とは言えぬ」『騎士道入門』 に書いてあるため、竜の涙を手に入れるまで跡を継がないという。
困った老男爵は、竜のハリボテを作り、テーオバルト に火矢を打たせ燃やさせて、竜を退治させたことにするという大掛かりなイタズラを思いつく。
こうして テーオバルト は、お供の ハンス と共に、意気揚々と竜を退治する旅に出かけた。
「ルドルフとイッパイアッテナ」の作者が送る、少年と家来の珍道中物語。

旅の冒頭から、「わからぬことがあれば、森の賢者に尋ねなければならない」と『騎士道入門』に書いてあるから賢者に聞きに行くと言い張られ、ハリボテ竜を北の山に仕込んだ家来のハンスは困ってしまう。
仕方なく木こりをにわか賢者に仕立て上げ、何を聞かれても「北の方じゃ」と答えろ、余計なことは言うなと釘をさしておいた。
ところが、『騎士道入門』には立派な人物には丁寧にかつ遠まわしに質問しなければならないと書かれているため「竜が いない のはどの方角でしょうか?」と聞いてしまう。
当然「北の方じゃ。余計なことは言わん。」と答える木こり賢者。
北の方角にハリボテ竜を仕込んでいたハンスは対応に大わらわとなる。
二人の旅は前途多難なのである。

そんな調子で続く二人の珍道中。
主人公のテーオバルトが、とても素直ないい子で魅力的である。
家来のハンスに言いくるめられると、おかしいなと思いながらも素直に信じるのである。
他の登場人物たちも個性豊かで、ユーモラスに描かれている。

最初から最後までクスクス笑いながら読めるのだが、最後はうまくまとまって感動的だ。

こんないい子が将来治める地域はきっと平和だろうな、と羨ましく思った。

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