2012年4月14日土曜日

未解決事件(コールド・ケース) 死者の声を甦らせる者たち

未解決事件(コールド・ケース)死者の声を甦らせる者たち
マイケル・カプーゾ著
日暮雅通訳

現代のシャーロック・ホームズたちを描いた大作ノンフィクション。鮮やかな解決に喝采を送りたくなる一冊。


著者は、1957年アメリカ生まれのノンフィクション作家、コラムニスト。
原題は「THE MURDER ROOM」

19世紀パリで活躍した史上初の探偵、ウジェーヌ・フランソワ・ヴィドック
その偉大なる探偵の名を冠したヴィドッグ・ソサエティ
1990年にフェラデルフィアで創設された、世界で最も閉鎖的な会員制の犯罪捜査クラブである。
メンバーは、ヴィドックの生きた年数82年と同じ数の82人。
人種・性別・年齢・国籍を問わず、犯罪捜査の第一人者たち---元FBI捜査官、プロファイリングの専門家、元警察官、科学者らが集まった超一流の捜査機関なのだ。
使命は2年以上経過した未解決事件--Cold caseの犯人を追いつめ、遺族たちを守ることである。
この犯罪捜査のボランティアグループは、警察が挫折した殺人事件に取り組み、その80%を解決に導いている。
ニューヨークタイムズが「ホームズの後継者たち」と呼ぶのも肯ける。

この本ではメンバーの中の代表的な数人の活躍が描かれている。
その中でも中心的な2名の能力が凄い。

聞きなれない職業である「法医学アーティスト」のフランク・ベンダー。
「法医学」という言葉の意味すら知らない高卒の青年が、初めて見た頭蓋骨から生前の顔が「見えて」彫像を作り、身元が割れる。そこから、警察とのかかわりができて犯罪捜査にかかわるようになった人物である。
昔の写真から、現在の様子を予想して彫像を作る。(18年後の姿とか!)
目鼻口・頬骨すらない大きな穴のあいた頭蓋骨から、顔を推察し彫像を作る。
それが神がかり的にそっくりなのである。
もう超能力としか思えない。

そして、プロファイラーのリチャード・ウォルター。
殺人現場の写真を見ただけで「小児性愛者の強姦魔に犯された子供の父親が復讐のために殺した」等と鮮やかに断言するのである。彼なりの思考過程、論理が書かれてはいるが、凡人の私にとってはこちらも超能力としか思えないのである。
個人的には、プロファイリングの型にはまらない例外もあるんじゃないの?とも思うが、ここまでズバッと当てられてしまうとお見事としか言いようがない。

そういった一流どころが、犯人を追い詰めていく様は読んでいてカッコよく痛快であった。
遺族の方々も、被害者は戻ってこないが、何が起こったかを知り、犯人が逮捕されることによって一歩踏み出すことができるのだと思う。
眉つばを感じた個所もあったが、この大活躍がノンフィクションだということは驚きに値する。

ジョンベネちゃん殺害事件や世田谷一家惨殺事件も是非とも鮮やかに解明してほしい。

ただ、複数の事件を細切れに同時進行するという構成が大変読みにくかった。
そして、分厚く(613ページ)重たく(662g)、持ち運ぶのが大変だった。

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