2012年4月17日火曜日

水の柩

水の柩
道尾秀介著
講談社

中学生を主人公にした、前向きに生きる勇気を与えてくれる小説。今までの道尾作品とどこか違う?!



老舗旅館の長男である中2の逸夫は退屈な「普通」の日常を嘆いていた。
同級生で転校生の敦子は、両親の離婚と級友からのいじめで辛い毎日を送っていた。
ある日、敦子に「小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルの中の手紙を書き変えたい、手伝ってほしい」と頼まれる。敦子の頼みに逸夫は・・・
村一番の金持ちだったという元女将の祖母・いくにも人には言えない秘密があった。
祖母がついた「生きるための嘘」、敦子が受けるいじめ、逸夫の決意、それぞれの想いに
晴れた空から降ってくる不思議な雨「天泣(てんきゅう)」が降り注ぐ。

今まで何冊か道尾作品を読んだが、今までの作品とは違った印象を受けた。
引き出しの多い方なのだなぁと感心する。
全体的に決して明るい話ではないが、中学生が成長していく姿が描かれていて、読み終わった後は前向きに生きる勇気を与えてくれる作品だった。

この本を読んで驚いたのは文章の上手さであった。
作家なのだから上手いのは当たり前だし、素人の私がそんなことを言うのは僭越だとは思うが、
文章のきれいさや上手さに、思わず読み返した箇所がいくつかあった。
雨が降っている情景、中学生の心情、うその告白場面、臨場感あふれる美しい文章で、それでいて簡潔で分かりやすい。
中高生にもお勧めできる一冊だと思う。

この中に出てきた「みの虫」。端切れや紙切れを与えるとカラフルな蓑ができるらしい。
一度見てみたい!

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