2012年1月7日土曜日

おまえさん 上下

おまえさん 上下
宮部 みゆき著
講談社文庫

宮部みゆき氏の『ぼんくら』『日暮らし』に続く第三弾。上下巻合わせて1200ページ超の大作ながら、人情味たっぷりの安心して夢中になれる本。さすがとしか言いようのない傑作。



(上下巻合わせて)
舞台は花のお江戸。
南辻橋たもとで、辻斬りが出た。亡骸を番屋に移した後、掃除したにもかかわらず人像(ひとがた)が地面に染みとなって消えない。土を掻いて均して塩をまいてもまだ消えない。
そしてまた他の事件が…。
下町情緒たっぷりの人情味溢れる人々が登場する時代ミステリー。

「ぼんくら」同心・平四郎
世話好きで気のいいお菜屋のお徳
岡っ引き・政五郎
などおなじみの登場人物に加え、
今回活躍する、熱意にあふれた新任の定町廻り同心で、ちょっと残念なお顔の間島信之輔。
その大叔父上で、たびたび物忘れはするがまだまだ健在の源右衛門。
河合屋の三男坊で遊び人の淳三郎。

そして忘れてはならない14歳になったという弓乃助とおでこのコンビ。

弓乃助は、平四郎の細君によれば、「彼に近づく者の人生を変えてしまうほど」の罪作りな美形である。万事遺漏のないように見える弓乃助ではあるが、ここだけの話、おねしょという子供らしい弱みがある。
そして、驚異的な記憶力を持っているおでこ。
この子の頭の中には長い巻紙があって、体験したこと・見聞きしたことを、何から何までそこに書き付けるのだ。で、思い出すときにはぐるぐるとそれをほどいて探す。特技は見事のなものだが、覚えた話を諳んじているだけなので、途中で遮られると、最初からやり直さねばならなくなるという弱点があった。

そんな登場人物が、いきいきとお江戸の町を動き回る。
この「いきいきと」が、さすが宮部みゆき氏だなぁと思う。
威勢のいい江戸っ子の言葉。
魚の棒手振りの天秤棒が肩から外れかけ、よろよろ回ってしまう様子。
頭の中で、活気あふれるお江戸の映像が浮かんでくる。

前半はどんどん話が広がって、頭があちこちに飛んでしまうが、
最後はやっぱりきちんと収めてくれる。
だから、このシリーズは安心して夢中になれるのである。

そして、弓乃助とおでこのコンビも立派に成長して、少年から青年になりつつある。
この二人のファンである私としては、目を細めて二人を見守っている。
近い将来この二人が立派にお江戸の治安を守るであろうことを想像しながら・・・
ただ、成長を喜ぶべきなのだろうが、一方で二人が遠くへ行ってしまうようで、
さびしい気持ちも湧いてくる。
いつまでもかわいく幼い二人のままでいて欲しいと思うのはわがまますぎるだろうか。
冷静に考えると江戸で14歳と言えば、立派な青年で子供扱いされる対象ではないのでは?と思うが。

なんにせよ、読み終えてすぐ、次作が楽しみになる傑作であった。

※前半で出てきた汚い字の恋文、誰が書いたかわかった時には噴き出してしまいました。

2 件のコメント:

  1. kansas(本が好きからきました)
    ブログ始めてきます。

    最近宮部氏の本をまた読み出しました。個人的におまえさん、あかんべぇ、誰かの3つが気になります。

    今度おまえさんを狙ってみます。

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  2. おまえさんは「ぼんくら」「日暮らし」に次ぐシリーズ第3弾んなので、先に2作読んでからの方がお勧めです。
    コメントありがとうございました♪

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