2012年1月25日水曜日

ペルフェクション

ペルフェクション
ヒキタクニオ著
文春文庫

バレエダンサーたちが頂点を目指すコンクール「ペルフェクション」 今、究極の闘いが幕を開ける。




2060年。
バレエコンクール「ペルフェクション」で5年間王座を守り続けている武任は、過酷な演技をこなすため、身体の管理をするドクター、体にインプラントする装具の制作を引き受けるメカニック担当、トレーナーなどとチームを組み、身体・食事・練習・休息と完璧に仕上げて、究極の闘いに挑む。追うものと追われるもの。そこにに忍び寄る「老い」と「罠」・・・
巻末にバレエ経験者の米倉涼子さんと作者の対談付き。
2008年発売の単行本「Myname is TAKETOO」を文庫化にあたり改題。

バレエ漫画に、はまったことがある。「アラベスク」「SWAN」「昴(スバル)」・・・
なぜだろうと考えると、「ガラスの仮面」などもそうだが、<等身大の主人公が懸命な努力をして栄冠を手に入れる>というパターンに、感情移入しまくり、まるで自分が優雅に踊れるような錯覚を楽しんでいたからかもしれない。そして、踊るシーンや本番で観客たちの「本物の白鳥だ」のようなセリフにより舞台に入り込んでしまうのである。まるで自分が主役であるかのように。

この本は、主人公が男性、設定が近未来ということもあり、感情移入ができなかった。
特に冒頭は、ハイテク機械に戸惑いを覚えた。
しかし、ストイックにバレエを追求する主人公に魅かれ、いつの間にか主人公を応援する側になっていたのである。
違和感のあったハイテク系もだんだん気にならなくなり、あって当たり前の存在になる。
そして圧巻の本番シーンでは、張り詰めた空気、静まり返った客席、飛び散る汗、観客になった私まで緊張の連続で見守っていた。
何度も「やめて!そこまでしなくてもいいから!」と悲痛な叫びを心の中で叫ぶ。
そして、その後深い感動が待っていた。

そう、この本は近未来という味付けがされてはいるが、「王道の感動物語」。
ヘンに恋愛を絡めたりしない真っ向勝負の物語。
いくら文明が発達しても、舞台の上では本人の日ごろの鍛錬と精神力が頼りである。
そこが、ぐっとくるポイントなのだろう。

それから、バレエとは一見関係なさそうだけれども、何度も出てくる「日本人」と「日本刀」。
日本に生まれてよかったと自分が頑張ったわけでもないのに、勝手に誇らしく感じてきた。

この本を読んだ人は、次にバレエを見るとききっと舞台の裏の過酷な努力を思い出すであろう。

1 件のコメント:

  1. 私も現在、この本を読書中。まだまだ前半部分ですが、面白そうな内容ですね。楽しみです。

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