2012年1月10日火曜日

さいごの色街 飛田

さいごの色街 飛田
井上 理津子著


1955年生まれの女性フリーライターが体当たりで取材した渾身のドキュメント。衝撃の連続。知られざる現代の廓を初めて明らかにした本。男女問わず真剣に考えるべき問題ではないかと思う。



大正7年に開業した飛田新地。(大阪市西成区山王3丁目)
その名前を知ったのはつい最近のことであった。
橋下徹氏が大阪市長選に立候補した際に、週刊誌で「橋下氏は飛田新地の顧問弁護士だった
という記事を読んで衝撃を受けた。
これはいわゆる「ちょんの間」(ちょっとの間で済ますの意)ではないか!
摘発されて今はないのでは?合法なのか?
気になって調べてみるとやはり摘発され、今は全国的に壊滅状態だが(細々と営業)、
飛田新地だけは別格で、今でも160軒ほどが昔の遊郭そのままの雰囲気で営業しているらしい。
かつては、あの阿部定も1年あまり働いていたという。

この本は、飛田新地の歴史、システム、経営者・曳き手・お姉さんなどの話から構成されている。
そして、是非や善悪を問うているのではない。問題提起をしているのである。

本書によると、
店は「料亭」で、料亭の中でホステスさんとお茶やビールを飲むことが「遊び」である。
お客が案内される部屋はホステスさんの個室。その中で偶然にもホステスさんとお客さんが「恋愛」に陥る。恋愛は個人の自由。支払う料金は、ビールやジュースやお菓子の料金である。
表向きにはそういうシステムであるという。(値段は20分で11000円ほど)
飛田の大門から300mほどの西成警察署も黙認している。

二間ほどの狭い間口が通りにずらりと並ぶ。ピンクや紫の怪しげな蛍光灯の下にお姉さんが座り、
曳き手おばさんが脇につく。中には、60過ぎや太ったお姉さんもいるらしい。

「飛田新地料理組合」の組長も「私らはイカンことしてるんやから。書かれては困るんや」と言っていて、広告もせず、秩序を守り静かに営業を続けているという。

著者は、旅行ペンクラブ所属のインタビューやルポを中心に活動しているフリーライターで、1955年生まれの女性である。12年にも亘って危険を感じながらも、体当たりで飛田周辺を取材した著者。その勇気と根性は生半可ではない。
内容的に全てを明らかにすることはできないので、表現に気を使いながら、書けないことを呑み込みながら書いたのであろう。
この本が出たことで危ない目に遭わないことを願う。

読み進めるうちに、何度も読んで涙した、からゆきさんについて書いた名作『サンダカン八番娼館- 底辺女性史序章』(山崎朋子著 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作)を思い出した。
「サンダカン---」も本書も共通して、底辺で暮らす女性たちにスポットライトを当て、問題提起している傑作だと思う。
時代が違うだろうし、現在は遊びや自分の欲のために働く女性も多いだろうが、それでもまだまだ恵まれない環境で育ち「苦界に身を沈める」女性もたくさんいる。

いつも思うが、それを防ぐには、子供の教育それも、落ちこぼれをなくすことだと思う。
多くの人に読んでもらって、この問題を考えて欲しいと思う。

男たちの体験談
「今の日本に江戸時代が残っていた。」
「お姉さんは商売だと十分わかっていますが、何か事情があって、こういう仕事を選んだのだろうという境遇を含めて愛おしくなった。」
「こんな形と違って出会っていれば恋人になっていたかも」
「外でデートしたいなと思った。」
「不倫や他の風俗より健全」

しかし、なぜ愛しい男性たちは、こんなにも哀しくそしてアホなのだろうか。

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