2013年2月1日金曜日

ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾著
角川書店

♪ 現在(いま)がどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしい♪  ~「月光の聖者達~ミスター・ムーンライト」(桑田佳祐作詞作曲)より



映画「エイリアン」が公開され、サザンの「いとしのエリー」が流行っていた頃。
郊外にあるナミヤ雑貨店では、ふとしたきっかけからお悩み相談を始めることになった。
回答するのは店主。
相談者が雑貨店の郵便口に相談内容を入れておくと、翌朝勝手口の牛乳箱に回答が入っているというシステムだ。
当初は「生協の白石さん」のようだった相談も、だんだんと深刻な内容になっていく。
親身の回答が評判となり、「どんな悩みも解決してくれる雑貨店」として雑誌にまで取り上げられた。
そして時は流れ、もう誰も住んでいない雑貨店に逃げ込んだ3人組の男たちは、なぜかお悩み相談の手紙を受け取った・・・
様々な登場人物が、過去と未来を交差しながら「ナミヤ雑貨店」を中心に関わっていく。

本書は
・逃走中の3人組の男たちが雑貨店に忍び込む「回答は牛乳箱に」
・ミュージシャン志望の魚屋の息子の悩み「夜更けにハーモニカを」
・雑貨店の店主である父と息子の苦悩「シビックで朝まで」
・両親が夜逃げしたビートルズファンの「黙祷はビートルズで」
・児童養護施設で育ちその後成功した女社長の「空の上から祈りを」
以上5章からなる連作短編集である。

身近な人には相談しにくいこと、見ず知らずの第三者だからこそ打ち明けられること。
相談者たちのそんな深刻な悩みに、店主は正面から向き合い、苦悩しながら考える。
その回答内容が、素晴らしい。

そして、ちょっとした出来事が、時空を越えて行き交う手紙により雑貨店や児童擁護施設の「丸光園」とどんどん結びついて、最後の章ではうまくまとまり、明るい未来を予感させて終わる。
点と点が繋がって行くたびに「おぉ〜」と感心し、心がじんわり温かくなる。

「殺人事件が起こらない小説」ということで、今までの東野作品とはひと味違うのだが、入り組んだ人間模様や人々の深刻な悩みが描かれていて深みがあり、じっくり堪能させてもらった。

著者から「明日が今日より素晴らしくなりますように」と前向きになるメッセージを受け取った気がする一冊だった。

※著者が桑田佳祐さんの大ファンということで、相談の回答に歌詞が織り込まれていたり、章のタイトルも桑田さん風で、私もサザンファンの一人としてなんだか嬉しくなった。

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