2013年2月26日火曜日

海賊とよばれた男

海賊とよばれた男
百田尚樹著
講談社

人間万事塞翁が馬。出光興産を築き上げた男の心意気。
 
 

(上下巻あわせて)

本書は、出光興産の創業者・出光佐三(1885―1981)をモデルとした歴史経済小説である。
明治18年福岡県で染物業を営む家に生まれ、神戸高商卒業後、従業員3人の小さな商店に就職する。
その後独立し、「海賊」とよばれながら小さな伝馬船で関門海峡や瀬戸内海で燃料を小売し、
従業員5人の小さな商店から創業60周年の際には社員8000人超の巨大企業へと発展させる。


出勤簿も就業規則もない、定年がない、そして従業員をクビにしない。
そんな組織が成り立つのだろうか。

「もし潰れるようなことがあれば、ぼくは店員たちと共に乞食になる」
自分や会社の利益よりも、社員や日本という国の将来を想う・・・
そんな理想的な経営者が本当にいたのだろうか。

読み始めると信じられないようなことばかりで、
これは美化しすぎではないか。
こんな男が本当にいたのか。
神格化しようとしているのか。
気になって仕方がなかった。

しかし、そのうちこれが事実であろうがフィクションであろうが盛りすぎだろうが、そんなことはどうでも良くなってしまった。
この小説の主人公・銕蔵の生き様にすっかり惚れ込んでしまったのだから。

終戦時海外に重点を置いていた銕蔵の会社は、敗戦により多くの資産が失われ、会社の存続すら危ういのに誰一人クビにせず、皆で力を合わせて復興を遂げる。
戦地に赴いた店員の家族に給金を送り続ける。
そんな男だから、大金持ちや銀行がポンと大金を渡し、援助の手を差し伸べるのだ。

「店員は家族同然」という店主に応えるように、従業員たちも共に苦労し会社を支える。
学歴のあるエリートや重役でさえも、ときに泥だらけになりながら3K仕事を懸命にこなす。

次々に試練が襲いかかるが、苦悩しながらも銕蔵はどこまでも正しい道を突き進んでいく。
石油の利権に群がる大資本に正攻法で挑み、斬り込んでいく場面はなんとも小気味よい。

なんとすごい男だろうか。
なんという熱気だろうか。
特に下巻は感動の嵐に巻き込まれること必至である。

どこまでもこの男についていきたい・・・そう思わせる主人公・銕蔵。
己の正義を貫き通し、戦い続けた男。
今の世の中にこんな男がいてくれたらと願う一冊だった。

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