2013年2月10日日曜日

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る
辻村深月著
文藝春秋

しあわせは いつも じぶんの こころが きめる  by 相田みつを



※あらすじは全てネタばれしていますので、気になる方は読まずにスルーしてください。

「仁志野町の泥棒」
ミチルの通う小学校に律子という転校生がやってきて、人気者の優美子を加え3人で仲良くなった。
そんな中、律子の母親に盗癖があるという噂が立つ。
そして、ミチルは自分の家で盗みを働く友の母を見てしまう。

「石蕗南地区の放火」
36歳で独身の笙子は公有物件の保険事業を扱う財団法人で働いていた。
仕方なく参加した合コンで地元消防団の男と知り合う。
その消防団員が「ヒーローになりたかった」と消防団の詰所を放火する。

「美弥谷団地の逃亡者」
美衣は、出会い系サイトで知り合ったDV男と付き合い始めた。
その男がDVを阻止しようとした母を殺害し、美衣を連れて房総へ逃避行する。

「芹葉大学の夢と殺人」
絵本作家を夢見る未玖は、工学部の同級生で「医学部へ入り直し、かつサッカー選手になる」という夢を抱く男と付き合い始める。
うまくいかない男は大学の担当教授を殺害する。

「君本家の誘拐」
良枝は結婚して子供を望むがなかなかできず、3年後待望の赤ちゃんが生まれる。
しかしだんだん育児に疲れていき、自分の子供を虐待する。

本書は、過去に実際に起きた事件を題材としたような、以上5編の短編がおさめられている。

辻村深月さんの小説は初めて読んだのだが、心の内部を描くのがうまい方だなぁと思う。
普段は口に出さないけれども、普通の人々の心の奥に巣食っている「悪意」を表現していた。
私とは違う境遇の主人公たちに共感はできないが、なんだか誰もが持っている心の汚い部分を見せられたような気がした。

登場人物の女たちは、狭い社会で人と自分を比べ焦燥感を抱く。
「自分よりイケてないのに彼氏ができた」「お嫁さん候補No.1と言われているのに結婚できない」
「どうしてこんなレベルの男しか寄ってこないのだろう」・・・

第三者から見たら、「もっと視野を広く持って」「そんなつまらないこと考えてないでもっと広く社会を見たら色々な人がいるとわかるよ」とアドバイスしたくなるのだが、当事者にとったら深刻な問題なんだろう。

誰にでも起こりうるような事件だと思うとゾッとしてしまう、そんな1冊だった。

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