2017年4月5日水曜日

〆切本

大先生方、笑っちゃってごめんなさい。皆さんも〆切に苦しんでいたのですね。なんだか安心しました。



本書は、夏目漱石、谷崎潤一郎、泉麻人、西加奈子…大作家から現代作家、漫画家まで、〆切にまつわるエッセイ、手紙、漫画等を集めたアンソロジーです。

編集者にカンヅメにされる作家。
憧れませんか?
いえいえ、売れっ子作家になりたいわけではなく、高級ホテルで「お願い、待って。もうちょっとだから‼」などと呟いてみたいなぁと思っただけです。
でも、本書を読んだらそんなお気楽発言なんかしちゃいけないのが、よぉくわかりました。
だって、皆さん本当に笑っちゃうほど、必死に困っているんですもの。(笑)

「風邪気味なもんで、今日中になんとか」
「風邪は治ったんですが、ワイフが風邪ひいちゃって、家事をしなくちゃいけないもんで、今日中になんとか」
「ワイフの風邪は治ったんだが、ワイフの祖母が風邪ひいたんで、実家に看病に行ったら、その間に猫が風邪ひいちゃって…」
というミエミエの言い訳をするのは、高橋源一郎氏。
それを聞いた編集者はどう思ったんでしょうか。

遅筆で有名だった井上ひさし氏は、編集者に「殺してください」と申し出たそうな。
そんなこと言われても困りますよね。

そんな言い訳や、苦労話が90本も収められています。
人が苦しんでいるのを、笑いながら読んでしまってごめんなさい。

「原稿が遅れているいいわけをどうしようかずっと考えているので原稿を書く暇がない」とお嘆きの作家の皆さん、そんな暇があったらとっとと書いてくださいな‼
そう思ってしまうのは、編集者と素人だけなのかもしれません。

編集者とはこんなにも大変な仕事なのかと、同情の念を抱きます。
(吉村昭氏曰く、「締め切り過ぎてやっと小説をとった時の醍醐味は、なににも換えられないな」という編集者もいるらしいですが)
どうぞその苦しみを吐き出して、苦労話をお書きください。
編集者からみた「〆切本」も笑える…、いやいや、売れると思うのですが。

「締め切りが迫らなければ考える気がしない」とおっしゃる山田風太郎氏。
モチベーションや集中力のために、そして発売日や大人の事情のために、〆切が必要なのはわかります。
ということは、今もどこかで苦しんでいる作家さんがいるのでしょう。
どうか、編集者たちを苦しめずに早く仕上がりますように、お祈り申し上げます。

(でも、ちょっとは高級ホテルでカンヅメにされて「あー、書けない!」というポーズをしてみたいかも。)


※何人かの方は、〆切前に書き上げるとおっしゃってました。
性分だそうです。
私も夏休みの始めに宿題を終わらせてしまうタイプでした。
でも高校時代、原稿用紙80枚の小説を書く「80枚創作」という課題には苦労しました。
〆切日の通学電車の中で仕上げた思い出があります。
※恩師のエッセイも載っていました。先生はきっちりタイプだったのですね。

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