2017年4月20日木曜日

「本をつくる」という仕事

「本」はどのようにして作られるのだろうか?本にかける情熱を知り、本のありがたみ、読める幸せを噛みしめる。

稲泉連著
筑摩書房



誰かが、文章を書き、印刷し、製本する。
それが書店に並び、手に取り、読むことによって、私たちは読書を楽しむことができる。
当たり前のように毎日手にしている本だけれど、本をつくっている方々の仕事ぶり、彼らの熱い思いにどれだけ気づいていただろうか?

本書は、本づくりに携わる方々の仕事ぶりを追ったノンフィクションである。

大日本印刷のオリジナル書体で、明治時代に作られた活字「秀英体」。
職人たちが作り上げた滑らかで抑揚があり、力強い活字。
その温かみを現代に取り戻そうというプロジェクトに携わった伊藤さんは言う。
「こんなに幸せなことはない、という思いで働いていた。」

製本所の4代目である青木さんは、ドイツで製本技術を学んでいた頃を思い出して、言う。
「一つひとつの技術を身に付けていくことが本当に楽しかった。」

活版印刷の持つ歴史や世界そのものに魅了された活版印刷工房の方は、「とにかく活版で本をつくれる環境を残して、次の世代に渡したかったんです。」という。

他にも、校閲者、製紙会社、装幀家、翻訳書の版権仲介者、児童文学作家が登場し、仕事について熱く語っている。

本をつくるには、ここまで多くの人が関わっているのかと驚き、感動する。
1冊の本の背後には、プロフェッショナルなたくさんの人たちの工夫と熱意があるのだ。
読んでいる私は、彼らの思いを少しでも受け止めているだろうか?

もっと装丁や紙の質感、フォントを味わおう。
読みたいと思い買ったものの、後回しにして積んでいる本だって、多くの情熱が注がれているはずだ。
積んでばかりいないで、手に取ろう。
本好きたちが多くの本を購入し、読んで楽しむことが、「本」にとって一番幸せなことなのだと思う。

※本書を読んで、新潮社の創設者・佐藤義亮氏に興味をもった。
「佐藤義亮伝」は1953年出版で手に入らないが、「出版の魂:新潮社をつくった男・佐藤義亮」「出版巨人創業物語」を読もうと思う。積まずに。

※製紙会社の章で興味深い話をみつけた。
1900年前後に製本された作品は、硫酸バンドという使い勝手の良い素材が使用され、紙が酸性だった。
そのため、酸化により紙の繊維が切れやすかった。
20世紀半ばに、世界中の図書館に収められたその時期の本が一斉に劣化し、ボロボロと崩れていくことが社会問題化されていた。
酸性紙以前の本は無事だったのに。
その後、中性紙が開発され、解決されたのだという。

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