2014年4月6日日曜日

翔ぶ少女

原田マハ著
ポプラ社

「羽があったらな。お父ちゃんとお母ちゃんに会いに天国まで飛んでいくんや!」阪神大震災で両親を失った兄妹の切ない祈りの物語。



私は原田マハさんの小説が好きで何冊か読んできました。

・キュレーターという経験を存分に発揮された「楽園のカンヴァス」などの美術を題材とした小説。
・「総理の夫」など、少しコミカルな内容の小説。
・「カフーを待ちわびて」「さいはての彼女」など、未来の希望に繋がるような勇気づけられる小説。
一人の作家が書いた小説とは思えないほど、傾向が違います。

どれも好きなのですが、なかでも個人的には「カフーを待ちわびて」のような静かな文章の物語が好きです。
読んでいて心が穏やかになり、活力がもらえるような気がするからです。

この「翔ぶ少女」も当初は「勇気づけられる小説」のつもりで読んでいたのですが、思っていたお話とはだいぶ違っていました。

原田マハさんは、西宮で5年間暮らしていたことがあるそうで、かつて住んでいたアパートが全壊し、大学時代の友人らが被災するという体験から、「どんなことでも乗り越えられる」「復興への想い」を込めて、本書「翔ぶ少女」を書かれたのだそうです。

主人公は、阪神大震災で両親を失った幼い少女・ニケ。
兄や妹と一緒に、震災で妻を失った心療内科の医師のもとに身を寄せることとなりました。
優しい大人たちに囲まれて家では明るく振舞っているニケですが、学校では友人たちから「震災孤児」「足に大怪我をしたかわいそうな子」という目で見られ、孤立していきます。
辛くて「お父ちゃん、お母ちゃんのとこに飛んでいきたいねん。」と思うこともしばしばでした。

大切な人を亡くしたりと誰もが辛い思いをしながらも、明るく軽妙な関西弁でやり取りするご近所さんたちとの会話が、かえって涙を誘います。
ホロリとさせられる場面がいくつもありました。
中盤までは。



以下ネタバレです。



中盤あたりで、突然主人公の少女の背中から羽が生えてくるのです。
夢の中の出来事ではありません。
背中から本物の(?)白い羽が飛び出してきたのです。

思いも寄らない展開に、えっ!と驚きました。
阪神大震災という現実に起こった出来事が題材であり、神戸市長田区という実在の場所が舞台なので、現実離れした羽の出現に強い違和感を抱いてしまいました。
決して嫌いな話ではないのですが、どうしても「羽」の部分が受け入れられなかったのです。

本書の読後感は、羽の出現に違和感を持つか持たないかによって変わってくると思います。
私は、図書館の新着本で見つけて何の情報もないまま読み始めました。
最初から、ファンタジー要素があるとわかっていたら違った読後感になっていたかもしれません。
個人的には、羽を出現させなくても素敵な「再生の物語」になったのではないかと思うのですが。

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