2014年4月15日火曜日

昨夜のカレー、明日のパン

木皿泉著
河出書房新社

嫁と義父の不思議な共同生活。穏やかに流れる静かな日常。この雰囲気、好きだなぁ。



やっぱり次の日のカレーって、味に深みが出て美味しいですよね。
カレー大好きです。

この本の題名は「昨夜のカレー、明日のパン」ですが、残念ながらあまりカレーとは関係ありません。
パンの話でもありません。
どこにでもいるような登場人物たちの、穏やかな日常が綴られた連作短編集です。

著者の木皿泉さん(夫婦二人の共同ペンネーム)は、「野ブタ。をプロディース」や、「Q10」などを手がけた脚本家で、これが初めての小説だそうです。
本書で、2014年の本屋大賞にノミネートされています。

物語は、嫁と義父の不思議な同居生活の話から始まります。
テツコは7年前に夫を亡くしているのですが、その後もなぜか亡くなった夫の父・通称「ギフ」と一緒に暮らしています。
長く二人で暮らしていくうちに、阿吽の呼吸で日常生活を営んでいくようになりました。
でも、お互いに踏み込みすぎない、微妙な距離感を保っているのです。
別に二人は、できてるわけじゃないですよ。
テツコには、お付き合いしている同僚がいるのです。
二人の共同生活、テツコの彼氏、隣人、いとこ、と視点を変えながら、日常生活が綴られていきます。

脚本家ということもあるのでしょうか、本書はとても読みやすく、ドラマを観ているような、コミックを読んでいるような、情景がすぐに浮かんでくるような物語なのです。
とてもゆったりとした、穏やかな空気が流れているように感じました。
近しい人の「死」が全編通してテーマになっていますし、笑うことができなくなった客室乗務員のように、楽しい話ばかりでもありません。
それでも、なぜかほんわかした雰囲気が漂っているのです。

大事件や衝撃とは無縁な、地味に普通に暮らしている人たちの日常。
だけど不思議な雰囲気を持つこの物語。
好きだなぁ、こういうの。

0 件のコメント:

コメントを投稿

閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。