2014年4月10日木曜日

七帝柔道記

増田俊也著
角川書店

北大柔道部の汗と涙の青春。わーい!肉体派の男祭りだぁ!とワクワクして読み始めたら・・・くぅ( ´Д⊂ヽ 泣けてくるぜっ!過酷な練習の先に彼らが見たものは。




北海道大学柔道部出身の著者が、学生時代を振り返った自伝的小説である。
主人公の増田は二浪の末、憧れだった北大柔道部に入部した。
連続最下位の七帝戦で優勝することを目標に、厳しい練習に明け暮れる。

「七帝柔道」とは、北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学の旧帝大で行われている寝技を中心とした独特の柔道である。
全日本選手権やオリンピックなどの柔道とは違い、寝技への引き込みOK、絞め技も頸動脈を圧迫して脳へ行く血流を止め「落とす」(意識を失う)まで、関節技も待ったなしの過酷な柔道なのである。

七帝柔道は「練習量がすべてを決定する」と言われていて、その練習は想像を絶する過酷さだ。
畳に溜まる汗の水たまり。
練習後には体重が5~7キロ減り、動くこともできずに道場の隅で転がる。
警察への出稽古で、重量級の猛者たちに肉体もプライドも人格さえも滅茶苦茶にされる。
そして満身創痍のまま、また次の日にはテーピングしながら練習、練習。
楽しい学生生活を謳歌している男女を横目に、女の子ともオシャレとも無縁の、柔道以外何もできない、柔道漬けの毎日を送る柔道部員たち。
将来柔道で食べていくわけでもないのに、ひたすら苦しい練習を続けるのである。

肉体派男子が大好きな私は、「わーい!男祭りだ♡」と喜びながら読み始めたのだが、すぐに申し訳なさでいっぱいになり、ひれ伏したくなってしまった。
こんな苦しい世界があるなんて知らなくてごめんなさい。
その逞しい肉体は過酷な練習の賜物だったんだね。肉体派が好きなんて軽く言っちゃってごめんなさい。
大学時代、勉強もせず毎日楽しく遊び歩いていました。ごめんなさい。
とにかく、何もかもごめんなさい!!
そう言いたくなるほどの圧倒的厳しさなのである。

臨場感溢れる試合場面では「行けー!」と応援に熱が入り、新入生歓迎会のバカ騒ぎに大笑いし、同期や先輩たちとの固い絆に胸が熱くなる。
同じ著者の『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を読んだ時もそうだったが、今回も女の身ながら何度も男泣きさせられた。

現在も七帝戦は行われているという。
知り合いの現役京大生・阪大生たちに、柔道部は今でもこんな過酷な練習をしているのか聞いてみたところ皆一様に「柔道部員を見かけたことすらないから知らない。」という素っ気ない返事だった。
ううっ(´Д⊂ 誰も知らなくても、孤独に練習に励む柔道部員たち。
素敵ではないか!

登場人物と一緒に、過酷な練習に苦しくなり、熱く応援し、肩を組み一緒に応援歌を歌いたくなる、そんな超弩級の物語だった。
まだ4月だが、2014年の私が読んだベスト小説はこれで決まりだっ!!(暫定)

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