2014年4月19日土曜日

わたしの小さな古本屋~倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間

田中美穂著
洋泉社

ゆったりとした時間が流れる古本屋さん「蟲文庫」の店主・田中美穂さんのエッセイ。こんな居心地良さそうなお店、いつか行ってみたい!!



倉敷の美観地区にある小さな古本屋さん・蟲文庫。
その店主である田中美穂さんのエッセイです。

田中さんは21歳の時、高校卒業後勤めていた会社で突然配属替えを言い渡され、納得いかずに退職を申し出ます。
そして「せっかくなので古本屋をやってみようと思う。」とすぐに店舗探しを始めたのです。
本屋さんや古本屋さんでの経験もないのに、本が好きというだけで!
しかも開業資金に通常500万~1000万円かかるところ、手持ちの資金は100万円だけだったのです!!

私だったら、いや誰でもそんな話を聞いたら「なんて無謀な!やめときな。もう少し経験を積んでから開業しても遅くないんじゃない?」と忠告すると思うのです。
でも、田中さんは店舗を見つけ、棚板を買って本棚を作り、手持ちの数百冊を並べて開店にこぎつけます。

だからといってこの田中さん、「バリバリのやり手」という感じではないんですよね。
文章からは、とても落ち着いた、物静かなおっとりした大人の女性といった雰囲気が漂ってくるのです。
10坪にも満たない狭い店舗で、ライブやトークイベント、手作り品の販売と様々な企画をされていますが、気負わず一つ一つ丁寧にこなしているように感じられます。

掲載されている店内の写真は、アンティークというより昭和な雰囲気が漂い、ここには田中さんらしい、ゆったりとした時間が流れているようです。
しかも店内に、看板猫がいて、亀までいるのです。
たくさんの本に囲まれた居心地良さそうな空間・・・ああ、ここで何時間でも長居したい!(迷惑だろうけど。)

新刊書店も古本屋さんも、個人経営のお店はどこも経営が苦しいと聞きます。
開業当初こそ、早朝や夜間にアルバイトをしていたという田中さんですが、現在は古本屋専業だそうです。
ここまで来るには大変なご苦労があったでしょうし、お客様から心無い言葉を投げかけられることもあるようです。
それでも蟲文庫は現在まで20年以上続いているのですから、すごいことではないでしょうか。
それはきっと、田中さんには人を惹きつける魅力があるからだと思うのです。
現に私も、田中さんの「苔とあるく」「亀のひみつ」 を読んで田中さんに興味を持ち、この本を手にとったのですから。

だけど、誰かに「経験もお金もないけど古本屋を始めようと思う。」と言われたら、「やめときな。」と言うだろうなぁ。

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