2014年3月12日水曜日

美雪晴れ―みをつくし料理帖

髙田郁著
角川春樹事務所



水害で両親を亡くし天涯孤独の身となった主人公の
故郷・大坂での料亭修行を経て、今は江戸・神田の料理屋「つる家」の調理場で、腕をふるっている。
店主を始めとした温かい人々に囲まれながら日々精進しているのだが、そんな健気な澪を次々と試練が襲う・・・
美味しさと優しさに包まれた「みをつくし料理帖シリーズ」の9作目である。

澪と読者を散々苦しめてきたこの物語だが、今回は嬉しい出来事もあり、まだまだ試練の連続ながら読者は一息つくことができるのではないだろうか。

「ちょんと山葵をつけて」「旨いと身を捩る」「丸い目をきゅーっと細める」といった料理の美味しさを伝える表現が上手いので、食べたくなってしまうシリーズでもある。

今回も「焼き蒲鉾」や「蓮根と蕪で作ったもち」など、体にも心にも優しそうな料理が出てくるのだが、これがまた手が込んでいる!
魚を30分以上すり鉢でする、蓮根と蕪をすりおろす・・・
著者の高田郁さんは、小説に出てくる料理全てを実際に作って研究しているという。
腱鞘炎になったこともあるらしい。
今回も大変苦労なさったのではないかなぁ。
食べることは大好きだが、めんどくさがり屋の私は作ることを想像しただけで気が遠くなりそうだ。
誰か作ってくれないかな・・・

大好きなこのシリーズも次の10巻目でおしまいだという。
もうすっかりこの物語に馴染み、登場人物それぞれを親しい友人や知人のように思えてきたのに、とても残念だ。

「寒中の麦」----過酷な状況でも青々と育つ麦のごとく----と言われた澪だが、もう十分すぎるほど辛い経験をしてきたのではないだろうか。
だからきっと、最終巻では嬉し涙を流せるだろうと期待している。

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