2013年12月8日日曜日

クローズド・ノート

雫井脩介著
角川文庫



主人公は教育大学に通う 香恵
影響されやすく、あまり主体性のない天然系女子である。
一人暮らしの部屋で、前の住人が残していった手紙とノートを発見した。
どうやら前の住人は「伊吹先生」と呼ばれる小学校の先生だったようで、手紙には「先生大好き」といった生徒たちからのメッセージが書かれていた。
そして、ノートには受け持ちのクラスのことを真剣に考えている様子や、好きな男性「隆」のことが事細かに綴られていた。
それを少しずつ読み進めるうちに、香恵は「伊吹先生」の大ファンになり、先生の恋愛を応援するようになっていった。

香恵はある日、自分の部屋を見上げているイケメンに出会う。
その男が、バイト先の文房具店に万年筆を買いに来て交流が始まった。
その彼・イラストレーターの隆作は、亡くなった「伊吹先生」の元カレだった!
その事実に、読者はすぐにピンと来てしまうのだが、香恵はずっと気づかないまま・・・

偶然が重なりすぎの都合のいいストーリーなのだが、不思議と不自然さは感じない。
それは、香恵の心情を細かく丁寧に追っていくからだろう。

しかし、どうも今ひとつ物語に入り込めない。
主人公の女の子が、ドジで天然で素直でかわいい「男が理想とする女」のような気がするからだ。
こんな子いないよ、とひねくれ者の私は思ってしまうのだ。
女性作家が書いた私の好みの「理想の男性」にはすぐキュンキュンするくせに、なんてわがままな読者なんだろう。

ただ、ストーリーは正統派の純愛物語でなかなか面白いなと読み進めると・・・
これは反則だぁ!
「恋人の死」「死んでも想い続ける」っていうのだって悲恋の鉄板なのに、子供たちまで使うとは!
筋書きが見えていても、これは切なすぎるではないか!
登場人物には共感できないものの、哀しみだか感動だかなんだか自分でもよくわからないものがこみ上げてきてしまった。

雫井脩介さんは、ミステリーしか読んだことがなかったけれど、こんな物語もお書きになるんだなぁ。
やられてしまったではないか。

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