2013年11月7日木曜日

おとうさんがいっぱい

三田村信行作
佐々木マキ絵
株式会社理論社

お父さんが増えた!誰が本物のお父さんなのか?・・・これは童話なのか?SFなのか?それともホラーなのだろうか?



表紙の男3人が夫に似ている。
禿頭でヒゲを生やしているところが同じ、というだけなのだが。
図書館から借りてきたら、子供たちが表紙を見て「うわぁ、まさにお父さんがいっぱいだ!」と大盛り上がりだった。

この「おとうさんがいっぱい」は5編が収録された児童書である。
児童書といっても、侮れない、なかなかシュールな物語ばかりだ。

「ゆめであいましょう」
ミキオは、昔の自分が出てくる夢を見た。
最初は生まれたばかりの赤ん坊、次は5歳くらいの男の子・・・と夢を見るたびに大きくなっている自分。
どの子も夢の中で現在の自分を見ると怖がってしまう。
良い子は夢を見るのが怖くて、夜な夜な怯えてしまいそうな話である。

「どこへもゆけない道」
駅から自宅へ戻ると、そこはいつもの自宅ではない。
もう一度駅前へ戻り、自宅へ帰ってみるが、今度は自宅が消えている。
自宅が変わってしまったらどうしようと、外出するのが怖くなってしまいそうな話である。

そして表題作の「おとうさんがいっぱい」
いつの間にかお父さんが増えているのである。
どのお父さんも自分が本物だと言い張り、喧嘩になってしまう。
我が家だけではなく、全国いたるところで父親が増えるという騒ぎが持ち上がっていた。
中にはお父さんが12人も増えてしまった家庭も!
政府も対策に乗り出すのだが・・・

その他
マンション5階の自宅からどうしても出られなくなってしまう「ぼくは5階で」
お父さんが壁の中へ入ってしまう「かべは知っていた」
など、子供に全く媚びていない物語ばかりである。

どの話も、なぜそうなってしまったのかという説明もなしに、強引に話が進んでいく。
読者は、えー!と驚愕しながらどんどん引きずられていってしまう。
これが子供向けなのか?
SF、いやホラーではないのか?
童話ならばせめて話を丸く収めてくれたらいいのに、そんなこともなく突き放されたまま話が終わってしまう。

良い子のみんなは、この本を読んで夜ぐっすり眠れるのだろうか。
是非とも小学生の感想を聞いてみたい。

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