2013年11月12日火曜日

あい 永遠に在り

高田郁著
角川春樹事務所

幕末から明治を生き抜いたある夫婦の物語。





北海道足寄郡陸別町。
そこに関寛斎資料館がある。
関寛斎は、幕末から明治にかけて活躍した医師である。
その後、古希を過ぎてから北海道に渡り「開拓の祖」と呼ばれた。
本書は、その関寛斎の妻 あい を主人公にした高田郁さんの小説である。

上総(千葉県)の農村に生まれたあいは、18歳で従兄弟である関寛斎の元へ嫁ぐ。
関寛斎は、「乞食寛斎」と呼ばれながら苦学して医師になったばかりの23歳であった。
私塾を開き厳しい指導で知られる舅、他人に厳しく自分にはもっと厳しい「般若のお面の下に、菩薩の顔が隠れている」と言われる姑の下で暮らしていたが、その後夫と共に銚子・徳島へと移り住んだ。
夫・寛斎は、徳島藩医、戊辰戦争の軍医として偉大な功績を残したが、立身出世や金儲けには目もくれず、患者のために尽くし、あいは内助の功を発揮して夫を心身ともに助けていく。
そして、寛斎73歳あい68歳の時に築いた財産を整理し、北海道開拓の道へと旅立つ。
人たる者の本分は、眼前にあらずして、永遠に在り。
(目先のことに囚われるのではなく、永遠を見据えること。)
偉大な功績を残した夫と、陰ながら支え続けたあい。
そんな素敵な夫婦の愛の物語である。

あいは過酷な運命に翻弄されながらも沢山の子を産み育て、大きな試練を乗り越えていく芯の強い女性である。
しかし、寛斎に「どのような状況にあっても物事の良い面だけを見る」と言われるような、明るく楽観的な一面がある人物として描かれている。
困難を乗り越えていく強い女の迫力ある物語になりそうな設定だが、心温まる「愛」の物語になっているのは、高田郁さんによってまろやかさが味付けされているからだろうか。

これで高田郁さんが書かれた既刊の小説は全て読破したが、どれも本当に心温まるいい物語ばかりで、全くハズレがない。
11/14に初めての現代小説が出版されるようなので、そちらも楽しみに待ちたい。
(本音は、早く「みをつくし料理帖シリーズ」や「出世花」の続編を書いていただきたいのだが。)

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