2013年7月23日火曜日

黙示

真山仁著
新潮社

農薬、遺伝子組み換え作物、TPP、食糧危機・・・食と農業について考える。


農薬は悪。
そう決めつけていいのだろうか。

野菜作りは、虫との戦いだ。
耕地が広くなればなるほど、農薬に頼らざるを得ないのではないか。

実家の父は、私が生まれるずっと前から野菜を作り続けている。
自宅の裏に畑があるが、定期的にタンクをしょって農薬を撒いている。
マスクなどの防備もしていないので、長年吸い続けているだろう。
しかし今でも元気に畑を耕し、その農作物を日々食べて暮らしている。

私自身も幼い頃から農薬散布中の父の横で遊び、その野菜を食べてきた。
現在は縁あって、週に1回個人の方から無農薬野菜を購入している。
それでは足りないのでスーパーで普通の野菜も買っている。
そんな暮らしをしてきたが、肥満症の他は特に健康に問題はない。

農薬を口に入れたことがない人など、今の日本にはいないのではないだろうか。
農薬は悪なのではなく、取り扱いに気をつけて安全性の高いものを適切に使うことが必要なのだと思う。

この「默示」(真山仁著)は、農薬だけでなく遺伝子組み換え作物など食全般について考えるきっかけを与えてくれる小説だ。

農薬散布中のラジコンヘリが小学生の集団に墜落し、撒き散らされた薬剤により多数の被害者が出るところから話は始まる。
ラジコンヘリを操縦するのは有資格者のみと決められているのに、小さな孫に操縦させてしまったのだ。
重症となった少年の父は、散布された農薬の開発責任者だった。

農薬が原因で蜂がいなくなったと考え、農薬反対を訴える養蜂家。
美貌と鼻っ柱の強さで政界を渡り歩いている政治家。
農水省の女性キャリア。
遺伝子組み換え作物を売り込みたいアメリカの企業。
それぞれの思惑が絡み合い、話は遺伝子組み換え作物、人口爆発や干ばつによる食糧危機、TPPへと広がっていく。

小説だとわかっていながらも妙にリアルに感じられ、食と農業について否応なく考えさせられる。
農薬の是非について、TPP参加について。
遺伝子組み換え作物は、農薬もいらなくなり、砂漠でも栽培できる万能植物なのだろうか。

近い将来、世界が食糧を奪い合う時代がやって来ると言われている。
日本の未来は明るいだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。