2013年7月11日木曜日

ジヴェルニーの食卓

原田マハ著
集英社

画家を献身的に支えた人々の物語。まさに読む美術品。



本書は、キュレーター経験もある著者が、画家との信頼関係で結ばれた4人を主人公にした短編集である。
有名画家が実名で登場するが、語り手は彼らをそばで見守る人々だ。

マティスの身の回りのお世話をするお手伝いさん。
ドガの壮絶な努力を間近に見てきた友人のアメリカ人画家。
セザンヌに出世払いで画材を提供していた画材屋の娘。
老いたモネを支え続ける義理の娘。

彼らが愛情深く見つめる先に、画家たちの素顔が浮かび上がってくる。

『タンギー爺さん』という物語では、売れない画家たちを温かく見守る画材屋の娘が、セザンヌに宛てて手紙を綴っていく。
セザンヌ自身は一度も登場しないが、彼の才能を信じ絵の具を提供し続ける画材屋の主人と、生活が苦しいながらもそれを赦す家族、そしてセザンヌとの絆が見えてくる。

画家たちの日常生活、作品を生み出す苦悩・・・
読んでいると虚実の境目がどこにあるのかわからなくなり、いつの間にか自分もその時代に佇んでいるような気分にさせてくれた。

たとえ「クロード・モネ」が「山田太郎」という無名の、あるいは架空の画家であったとしても、素敵な物語であることは間違いない。
「楽園のカンヴァス」と同じく期待を裏切らない一冊だった。

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