2013年7月17日水曜日

切り裂きジャックの告白

中山七里著
角川書店

臓器移植は「命のリレー」なのか。それとも偽善なのだろうか。



売春婦たちが鋭利な刃物で喉を掻き切られ、臓器を持ち去られる・・・
19世紀のイギリスを恐怖のどん底に陥れた「切り裂きジャック」事件。
挑発的な犯行声明をマスコミに送りつけた、劇場型犯罪だった。
スコットランド・ヤードが全力で捜査するも、未だ犯人は捕まらず。
現在まで生きていれば、120歳は優に超えているだろう。

そんな「切り裂きジャック」を彷彿させる連続猟奇殺人事件が起きた。

一人目は、警察署の目の前の公園で、死体が発見された。
臓器という臓器がすっかり抜き取られて空洞となった状態で・・・
その後次々と猟奇殺人が起こり、マスコミに「ジャック」と名乗る男から犯行声明が届く。
被害者たちは、同じドナーから臓器提供を受けていたことが判明した。
臓器移植を待つ病気の娘を抱える刑事が、犯人に迫っていく。

臓器移植について、移植を受けるまでの過程は注目されることがあっても、患者たちのその後の生き方についてはあまり報道されない。
本書に登場する移植された患者は、「他人の命をもらったんだから二人分頑張れ。少しでもくじけたり怠けたりしたら承知しない。」とプレッシャーがかかるのだと辛い気持ちを打ち明ける。
他人の善意をしんどく感じているのだ。
ああ、そうかもしれないと気づかされた。

先日、iPS細胞から作った目の細胞をヒトの目に移植する臨床研究が承認された。
将来的には、臓器移植は必要なくなるのかもしれない。

・・・そんな事を考えながら読み進めると、最後にどんでん返しの力技で驚きの結末が待っていた!
きっと来る、きっと来る、と身構えていても、見事にやられてしまった。

私が好きな著者の音楽の描写はなかったけれど、読み応えのある一冊だった。

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