河出書房新社
♪かわいいふりして あの子 割とやるもんだねと♪
1982年に発売されたあみんの「待つわ」を聞いたとき、「かわいい」と言われ続けるんだから嬉しいことじゃないかっ!と幼心に思っていた。
この「憤死」を読んでいたら、登場人物と「かわいいふりして~」のフレーズが結びついて頭から離れなくなってしまった。
本書は、
「おとな」幼い頃に見た夢を振り返る。
「トイレの懺悔室」
小学生の時、友人たちと近所の変わった親父の家に行き、罪を懺悔させられた。
社会人になり、同窓会で再開した当時の友人とその親父の家に向かう。
「憤死」
お金持ちで自分の自慢ばかりしていた小学生の時の友人が、自殺未遂をして入院した。
「人生ゲーム」
小学生の時友人の家で会った高校生が、人生ゲームの盤に出来事を書き込むと次々とその通りになってしまう。
以上、4編が収録された短編集である。
綿矢りささんの小説はいつも、普通の人々の日常を描いているようで、時々怖いようなゾッとするような表現が出てくるので油断禁物だ。
本書も同じように、誰の心にでも潜んでいるような悪い感情がチラチラ見え隠れしている。
4編とも主人公から見たちょっと変わった人物について描かれているのだが、主人公たちだって平然と毒を吐き出すのだ。
文章は爽やかでさらっとして読みやすいのに、読んでいるとなぜか老成感が漂ってくるように感じられた。
綿矢りささんは、1984年生まれの29歳。
こんなにお若いのに、心の奥深くに入り込んでしまうとは驚くばかりだ。
これからもっと様々な人生経験がを積まれて、作品がどのように変化していくのだろうか。
楽しみな作家さんである。
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