2013年5月7日火曜日

生きるぼくら

生きるぼくら
原田マハ著
徳間書店

「青年が田舎暮らしを通して成長していく」そんなよくある話をここまで感動的な物語にできるとは。 原田マハさんはすごいなぁ。



「引きこもりの青年が田舎暮らしを通して変わっていく」
こう書くと、なんだかとてもありきたりの展開、お涙頂戴のよくある物語のように思えてくる。

本書は、そんなあらすじながら感動的に味付けされた、原田マハさんの小説である。

主人公は過去の辛い出来事から引きこもりになり、昼夜逆転でネットの世界に入り浸る生活を送っている24歳の青年だ。
母子家庭で苦しい生活の中、母は身を粉にして働いている。
そんな母が突然家を出た。
現金5万円と今年届いた年賀状を置いて。

その後主人公は、田舎でおばあちゃん、対人恐怖症で引きこもっていた女の子と3人で暮らすことになる。
それぞれ心に問題を抱えながら「自然の田んぼ」に癒されていく・・・

あぁ。
こうして私があらすじを書くともっと陳腐な話のようになってしまうので、ここまでにしておこう。

好きで引きこもっているわけではない主人公の苦しみ、対人恐怖症の少女のトラウマ、優しかったおばあちゃんの認知症。
現実社会でも起きているそれらの問題が絡み、思わず涙してしまった。
この物語は、決して明るい話ではない。
簡単に解決できるような問題でもない。
しかし、登場人物たちを応援していた私が逆に「前向きに生きていこう、きっと未来は明るいよ」とエールを送られているような気持ちになった。

代表作「楽園のカンヴァス」とは、同じ方が書いたとは思えないくらい題材も雰囲気も全く異なる。
違うトーンの小説をそれぞれ高水準で世に送り出す原田マハさんはすごいなぁと、より一層ファンになった。

心が疲れたら、この本を再読しよう。
きっと、前向な気持ちになれるから。

※キーワードとしておにぎりが頻繁に出てくる。
コンビニのおにぎりも十分美味しいと思うが、やっぱり母が握ってくれたシンプルなおにぎりが私にとっては一番だ。

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