キョンキョンはトップアイドルで、私なんか校庭の片隅でひっそりと干からびているセミの脱け殻でしたから。
キョンキョンと言えば、まごうことなきかつてのトップアイドルですよね。
だけど私にとっては大好きだった「あまちゃん」の中で演じた、主人公の母親「春子」さんのイメージがいまだに強いのです。
あまロスから立ち直ったとはいえ、どんなドラマを見ても「あまちゃんとは比べ物にならない!」と思ってしまう後遺症が……
って、そういえば本の話でしたね f(^_^;
本書は雑誌「SWITCH」に「原宿百景」として連載されたエッセイに加筆修正されたものです。
デビュー前のヤンキー時代(!)の話、アイドル時代の話・恋愛の話など、ファン垂涎のエピソード満載です。
そしてそして、なんと!
「あまちゃん」のことも少しだけ載っているのです!
両親の離婚、肉親やペットの死、表題にもある黒い猫の衝撃など、辛い話・悲しい話・怖い話も多いのですが、不思議と湿っぽくは感じませんでした。
文章がサラッとしているのです。
それでも私の青春時代と重なるエピソードも多く、ノスタルジックな気分になりながら、読み終えたのでした。
キョンキョンの書く文章を初めて目にしたのは、読売新聞の書評欄でした。(書評委員を卒業されたのは残念です。)
あばずれ感半端なかった春子さん・かわいこちゃんとは一線を画していたとんがったアイドルの頃のイメージとは違って、優しい落ち着いた大人の女性という印象で、そのギャップに驚いたものでした。
本書も「ここまで赤裸々に!」とびっくりする箇所はありますが、優しい文章で芸能界の派手さを感じさせない、普通の感覚の方なんだなぁというのがよくわかります。
ところで、キョンキョンは賃貸契約の更新をしたことがないのだと言います
なぜなら、引っ越しても引っ越しても、ファンに見つかり騒がれて他の住人に文句言われて、大変なことになってしまうからだそうです。
さすが「なんてったってアイドル」、色々ご苦労があるんですね。
(タイトルの「セミの脱け殻」は、「あまちゃん」で片桐はいりさん扮するあんべちゃんのセリフをパクらせていただきました。)
2016年9月15日木曜日
2016年9月13日火曜日
クロコダイル路地1,2
皆川博子著講談社
皆川博子さんが1930年生まれって知っていましたか?
フランス革命前後の動乱期を生きる人々を描いた長編小説。
視点が、貴族やブルジョワジー、貧民層と入れ替わりながら、一人称で語られていく物語です。
実在の人物や場所、歴史的事件を織りこみながら、フランス・イギリスにまたがって壮大な皆川ワールドが広がっていきます。
これは戦争の話でもあり、復讐劇でもあり、悲しい愛の物語(恋愛だけではなく)でもあります。
どんどん引き込まれ、長編ながらも一気読みでした。
悲惨で悲しい場面が続きますが、最後に希望の光が見えてくるところが皆川さんのやさしさなのではないでしょうか。
過去の皆川作品「開かせていただき光栄です」「アルモニカ・ディアボリカ」の登場人物たちが登場した時には、思わず「あっ!」と声をあげてしまいました。
そんなところもファンにとっては嬉しいことなのです。
でも。
えっと、言いにくいのですが、個人的には何か物足りなさを感じてしまいました。
物語の起伏が少ないところでしょうか?
それとも一人称で内面の描写が多いところ?
ファンとして期待度が高過ぎたのかもしれません。
だからと言って、この作品がつまらなかったわけではありません。
しばしの間、フランス革命前後のヨーロッパに連れていってもらったのですから。
この世界観は、皆川博子さんにしか書けないと思うのです。
皆川さん、1930年生まれの御年86歳。
ただただ驚くばかりです。
2014年7月3日木曜日
その手をにぎりたい
柚木麻子著
小学館
お寿司を食べたくなる小説!?いえいえ、それだけじゃ終わらない。バブルの時代と共に成長していく一人の女性のせつない物語。
栃木から上京し、25歳を目前に故郷に帰りお見合いするつもりだった青子。
勤務先の社長に「送別会だよ」と、座るだけで3万円といわれる高級寿司店に連れて行ってもらった。
その店で、若い職人から白木のカウンターごしに握りを直接手渡され、刺身を載せただけではない「仕事」されている鮨を食べ、衝撃を受ける。
その寿司の味と、職人の手に惚れ込んでしまった青子は、急遽田舎に帰ることを取りやめ、不動産会社に転職する。
そして、慎ましい生活をしながら、青子はその寿司屋に通い続ける。
客と職人、カウンターをはさんでの対応。
想い続けても、それ以上の関係にはなれないのだ。
「ヅケ」も知らなかった田舎から出てきた大人しいお嬢さんが、仕事に打ち込んでいくうちに、いつしか華やかな都会の女性へと成長していく。
1983年に初めて寿司屋を訪れた日から1992年までの、一人の女性のせつない恋愛と成長の物語である。
まず、今まで読んだ柚木麻子さんの小説と違い、「浮ついた感」が全く感じられないことに驚いた。
「ランチのアッコちゃん」「伊藤くん A to E」などでは、その「浮ついた感」が小説の面白さを加速させていたのだが。
文壇暴露小説でもある「私にふさわしいホテル」の推薦文で、豊崎由美さんに「ユズキ、直木賞あきらめたってよ(笑)」と言われていたが、もしかしたら「ユズキ、本気で賞を狙ってるってよ」なのかもしれない。
(現在「本屋さんのダイアナ」で直木賞にノミネートされているので、そこで受賞するかもしれないが)
そして、この小説の舞台となっている1983年~1992年といえば、バブルの夜明け前から崩壊までである。
変貌を遂げる東京の街や当時の風俗がそこかしこにあふれ、その当時を知る者としてはとても懐かしい。
「ルンルンを買っておうちにかえろう」、ユーミンの曲、銀座のホステスやチャラい広告プランナー、地上げ、そしてバブル崩壊。
当時はまだ学生の身だったのだが、その頃のあんなことやこんなことを思い出し、感傷的になってしまった。
柚木さんは1981年生まれというからあの時代を体感していない分、第三者の目から冷静に描けたのかもしれない。
バブルに染まり、どんどん痛々しくなっていく主人公には共感できないものの、
鮨の描写が細かくて食べたくなる鮨小説。
バブルの時代を描くバブル小説。
せつない恋愛小説。
そんな多彩な顔を持った小説でもある。
小学館
お寿司を食べたくなる小説!?いえいえ、それだけじゃ終わらない。バブルの時代と共に成長していく一人の女性のせつない物語。
栃木から上京し、25歳を目前に故郷に帰りお見合いするつもりだった青子。
勤務先の社長に「送別会だよ」と、座るだけで3万円といわれる高級寿司店に連れて行ってもらった。
その店で、若い職人から白木のカウンターごしに握りを直接手渡され、刺身を載せただけではない「仕事」されている鮨を食べ、衝撃を受ける。
その寿司の味と、職人の手に惚れ込んでしまった青子は、急遽田舎に帰ることを取りやめ、不動産会社に転職する。
そして、慎ましい生活をしながら、青子はその寿司屋に通い続ける。
客と職人、カウンターをはさんでの対応。
想い続けても、それ以上の関係にはなれないのだ。
「ヅケ」も知らなかった田舎から出てきた大人しいお嬢さんが、仕事に打ち込んでいくうちに、いつしか華やかな都会の女性へと成長していく。
1983年に初めて寿司屋を訪れた日から1992年までの、一人の女性のせつない恋愛と成長の物語である。
まず、今まで読んだ柚木麻子さんの小説と違い、「浮ついた感」が全く感じられないことに驚いた。
「ランチのアッコちゃん」「伊藤くん A to E」などでは、その「浮ついた感」が小説の面白さを加速させていたのだが。
文壇暴露小説でもある「私にふさわしいホテル」の推薦文で、豊崎由美さんに「ユズキ、直木賞あきらめたってよ(笑)」と言われていたが、もしかしたら「ユズキ、本気で賞を狙ってるってよ」なのかもしれない。
(現在「本屋さんのダイアナ」で直木賞にノミネートされているので、そこで受賞するかもしれないが)
そして、この小説の舞台となっている1983年~1992年といえば、バブルの夜明け前から崩壊までである。
変貌を遂げる東京の街や当時の風俗がそこかしこにあふれ、その当時を知る者としてはとても懐かしい。
「ルンルンを買っておうちにかえろう」、ユーミンの曲、銀座のホステスやチャラい広告プランナー、地上げ、そしてバブル崩壊。
当時はまだ学生の身だったのだが、その頃のあんなことやこんなことを思い出し、感傷的になってしまった。
柚木さんは1981年生まれというからあの時代を体感していない分、第三者の目から冷静に描けたのかもしれない。
バブルに染まり、どんどん痛々しくなっていく主人公には共感できないものの、
鮨の描写が細かくて食べたくなる鮨小説。
バブルの時代を描くバブル小説。
せつない恋愛小説。
そんな多彩な顔を持った小説でもある。
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