2016年9月13日火曜日

クロコダイル路地1,2

皆川博子著
講談社

皆川博子さんが1930年生まれって知っていましたか?






フランス革命前後の動乱期を生きる人々を描いた長編小説。

視点が、貴族やブルジョワジー、貧民層と入れ替わりながら、一人称で語られていく物語です。

実在の人物や場所、歴史的事件を織りこみながら、フランス・イギリスにまたがって壮大な皆川ワールドが広がっていきます。
これは戦争の話でもあり、復讐劇でもあり、悲しい愛の物語(恋愛だけではなく)でもあります。
どんどん引き込まれ、長編ながらも一気読みでした。
悲惨で悲しい場面が続きますが、最後に希望の光が見えてくるところが皆川さんのやさしさなのではないでしょうか。

過去の皆川作品「開かせていただき光栄です」「アルモニカ・ディアボリカ」の登場人物たちが登場した時には、思わず「あっ!」と声をあげてしまいました。
そんなところもファンにとっては嬉しいことなのです。

でも。
えっと、言いにくいのですが、個人的には何か物足りなさを感じてしまいました。
物語の起伏が少ないところでしょうか?
それとも一人称で内面の描写が多いところ?
ファンとして期待度が高過ぎたのかもしれません。

だからと言って、この作品がつまらなかったわけではありません。
しばしの間、フランス革命前後のヨーロッパに連れていってもらったのですから。

この世界観は、皆川博子さんにしか書けないと思うのです。
皆川さん、1930年生まれの御年86歳。
ただただ驚くばかりです。

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