2011年9月6日火曜日

分身

分身
東野圭吾著
集英社文庫




北海道に住んでいる鞠子。幼い頃から母の愛に違和感を感じていた。
東京に住んでいる双葉。生まれた時から母と二人暮らし。
性格は全く違うが、なぜかそっくりな二人。
双葉のテレビ出演を機に、様々な渦に巻き込まれていく・・・

だいぶ前の医療サスペンスといえば、普通、医療の進歩に伴って古臭く感じてしまうもの。
でも、この本はそんなこと感じさせず、面白かった。
(専門家にはどうかわからないが)

最初から、暗く、薄気味悪いベールが一枚かかっているような気持ち悪さが最後まで続いていた。
自分と双子以上にそっくりな人がいたら?
まずは親の浮気を疑うかな?
でも、そんな話ではなかった。

東野作品の初期のいくつかは、終わり方が中途半端で納得できないものがあったが、
この作品は、余韻を残しつつも、とりあえずうまくまとまっていた。

考えさせられる点も多々あり、読み終わった後も、本能的な嫌悪感は尾をひいていた。

あと、一貫して「親の愛情」がテーマとして流れていた。
それが、気持ち悪さの中、救いだった。

改めて、昔の作品を読んでみたくなった。

2011年9月4日日曜日

モルフェウスの領域

モルフェウスの領域
海堂 尊著
角川書店





アツシ君は、網膜芽腫で右眼摘出術を受けるが、9歳の時に再発。
左眼も摘出しなければならなくなるが、新薬が開発され、日本で認可されるのを期待して、5年間コールドスリープ「凍眠」することになった。
それを見守る未来医学探求センターの非常勤の専任施設担当官・涼子。
おなじみの曾根崎伸一郎教授が考えた「凍眠8原則」にほころびはないのか?
スリーパーは無事に目覚めるのか?
もし目覚めたら、そのあとどう生きるのか?

まずは、Aiについて書かれていないのでホッとしました。(Aiセンターの名前は出てきましたが)
前半は、読みにくかった。
どうにも、杓子定規の官僚像・作者の意見の押し付け・・・等気になってしまって。
もう、海堂作品は卒業かなとも思ってしまった。

でも、中盤からは、ストーリー的におもしろくなり、夢中になって一気に読みました。
こういうこともあるから、やめられない。

「凍眠」している間、その人の基本的人権はどうなるのか?
その間、体は少しずつ成長するが、年齢はどうするのか?
色々考えさせられます。

いくつか気になる点も。

おなじみの愚痴外来の田口先生って、こういう普通のキャラだった?
今までと印象が違うのだけれど。

ロジック、論理のほころび、などの言葉が頻繁に出てくる。
世の中には、そんなに頭のいい人ばかりじゃないし、
論理的にばかりこだわる人ばかりでもない。
もっと感情的な人もいっぱいいるはず。
みんながみんな、「論理的なほころびはあるかないか」なんて考えない。
一人二人はそういう考えの登場人物がいてもいいけど、揃いも揃ってっていうのは考えもの。

でも、「凍眠学習」は興味ある。
誰しも一度は睡眠中に自然に学習できたらと憧れたのでは?
特に試験前。
音声を流すだけで暗記・理解できたらいいな。

著者は、お願いだから、押し付けがましく書かないでほしい。

2011年9月1日木曜日

心星ひとつ  みをつくし料理帖

心星ひとつ  みをつくし料理帖
高田 郁著
角川春樹事務所




シリーズの第6弾。

幼い頃両親を失い、大坂の料理屋で奉公していた澪。
今は、江戸の「つる家」の料理人。
店主・大坂時代のご寮さん・隣人など、みんないい人ばかりが出てくる物語。

正直、読みやすいし、文庫本で安いし、と軽い気持ちでこのシリーズを読み始めた私。
料理を作る過程や、食べてる人の描写が好きで読んでいた。食いしん坊だから?

ストーリー的には、いつもいい人多すぎっと、ちょっと斜に構えて読んでいたかも。

それが、今回は違った。

夢中で読んでしまった。

静かな、ほっこり系のお話と思っていたのに、大きく動いた。

坂村堂の意外な出自が明らかになったり、失敗作があったり(個人的には、失敗もなくちゃと
大歓迎)・・・

それから、大きな選択を迫られる場面が二つも!!

これからどうなるのだろうと、初めて次回作を早く読みたいと思ってしまった。

今回から瓦版が付いていたが、それによると1年に2冊執筆するのが限度って。
それはそうだろうとうなづけた。
時代考証も必要だろうし、レシピを考え、作ってみないと書けないでしょう。

澪がていねいに作る料理をいつも食べてみたい、近くに「つる家」があったらいいな。と思う。

自分で作ろうとも思うのだけれど、レシピを見ていつも挫折してしまう。

でも、今回の豆腐丼と大根の油焼きなら、私でも作れるかも。