ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
三上延著
アスキーメディアワークス
付き合い始めたばかりのあつあつカップルを想像して欲しい。
目をハートマーク♡にしてお互いを見つめ合っている二人に、外野がいくら「浮気するから別れたほうがいい」などと、とやかく言っても耳に入らないだろう。
今の私もそうだ。
このビブリアシリーズの3巻を読んですっかり惚れ込んでしまったものだから、冷静な目で読むことなどできない。
だから私の意見など全く参考にはならないだろう。
本書は、古書を題材にしたミステリーの第4弾である。
北鎌倉にあるビブリア古書堂でアルバイトをしている 主人公の 五浦大輔 23歳。
店主の 栞子さん は、極度の人見知り&内気だが、本に関する知識は膨大で本にまつわる謎ならたちまち解いてしまう。そして何より美人。しかもなぜか巨乳。
その2人が中心となって物語は進んでいく。
今回は今までのような連作短編ではなく、大量の江戸川乱歩コレクションを持つ女から相談を受ける話を中心とした長編となっている。
「乱歩はデビュー前に古書店を経営していた」などのトリビアや著作もたくさん出てくるので、乱歩ファンも十分楽しめるだろう。
また、栞子さんの母親の知られざる一面が明らかになったり、大輔と栞子さんの関係に変化が出てきたりと物語的にも大きく前進している。
この4巻でも「豊かな胸を」とか「もじもじと両手の指先を合わせる可愛い仕草」などといった男目線の萌え萌え表現が出てきたが、私のこの熱い気持ちは萎えることはなかった。
ただやっぱりこの巻を読んでも、栞子さんには好感が持てなかった。
同性だから厳しい目で見てしまうのか、女の怖さを知っているからなのか、「こんな、男が理想とするような女は実際にはいないでしょ」と思いながら読んでいる。
欠点をたくさん上げることもできるのに、なぜここまでこのシリーズにはまっているのか自分でも不思議に思う。
本に関するミステリーというところが一番魅力に感じているが、突っ込みどころ満載でもありブツブツ言いながら読むのが楽しいのかもしれない。
あとがきで「この物語もそろそろ後半です」との記述があった。
古書に関して下調べをすればいくらでもこのベストセラー小説を引き伸ばすことができるのに、と思うのは素人考えだろうか。
このまま水戸黄門のようになにも進展しないまま、永遠に続けてくれたらいいのにと思う。
※TVドラマも毎週録画して観ている。
栞子さんがあまりにイメージが違うので原作とは別物として楽しんでいるのだが、この本を読んでいたら主人公・大輔役のEXILEのAKIRAが頭に浮かんでしまった。
本は自分で好きなように想像して読みたいのに。
※参考
古書という題材を新鮮に感じ、すぐに夢中になった第1弾 :栞子さんと奇妙な客人たち
男目線で描かれている栞子さんに少し鼻白んだ第2弾 : 栞子さんと謎めく日常
萌え表現も少なくなりすっかり虜になった第3弾 :栞子さんと消えない絆
2013年2月28日木曜日
2013年2月26日火曜日
海賊とよばれた男
海賊とよばれた男
百田尚樹著
講談社
人間万事塞翁が馬。出光興産を築き上げた男の心意気。
(上下巻あわせて)
本書は、出光興産の創業者・出光佐三(1885―1981)をモデルとした歴史経済小説である。
明治18年福岡県で染物業を営む家に生まれ、神戸高商卒業後、従業員3人の小さな商店に就職する。
その後独立し、「海賊」とよばれながら小さな伝馬船で関門海峡や瀬戸内海で燃料を小売し、
従業員5人の小さな商店から創業60周年の際には社員8000人超の巨大企業へと発展させる。
出勤簿も就業規則もない、定年がない、そして従業員をクビにしない。
そんな組織が成り立つのだろうか。
「もし潰れるようなことがあれば、ぼくは店員たちと共に乞食になる」
自分や会社の利益よりも、社員や日本という国の将来を想う・・・
そんな理想的な経営者が本当にいたのだろうか。
読み始めると信じられないようなことばかりで、
これは美化しすぎではないか。
こんな男が本当にいたのか。
神格化しようとしているのか。
気になって仕方がなかった。
しかし、そのうちこれが事実であろうがフィクションであろうが盛りすぎだろうが、そんなことはどうでも良くなってしまった。
この小説の主人公・銕蔵の生き様にすっかり惚れ込んでしまったのだから。
終戦時海外に重点を置いていた銕蔵の会社は、敗戦により多くの資産が失われ、会社の存続すら危ういのに誰一人クビにせず、皆で力を合わせて復興を遂げる。
戦地に赴いた店員の家族に給金を送り続ける。
そんな男だから、大金持ちや銀行がポンと大金を渡し、援助の手を差し伸べるのだ。
「店員は家族同然」という店主に応えるように、従業員たちも共に苦労し会社を支える。
学歴のあるエリートや重役でさえも、ときに泥だらけになりながら3K仕事を懸命にこなす。
次々に試練が襲いかかるが、苦悩しながらも銕蔵はどこまでも正しい道を突き進んでいく。
石油の利権に群がる大資本に正攻法で挑み、斬り込んでいく場面はなんとも小気味よい。
なんとすごい男だろうか。
なんという熱気だろうか。
特に下巻は感動の嵐に巻き込まれること必至である。
どこまでもこの男についていきたい・・・そう思わせる主人公・銕蔵。
己の正義を貫き通し、戦い続けた男。
今の世の中にこんな男がいてくれたらと願う一冊だった。
百田尚樹著
講談社
人間万事塞翁が馬。出光興産を築き上げた男の心意気。
(上下巻あわせて)
本書は、出光興産の創業者・出光佐三(1885―1981)をモデルとした歴史経済小説である。
明治18年福岡県で染物業を営む家に生まれ、神戸高商卒業後、従業員3人の小さな商店に就職する。
その後独立し、「海賊」とよばれながら小さな伝馬船で関門海峡や瀬戸内海で燃料を小売し、
従業員5人の小さな商店から創業60周年の際には社員8000人超の巨大企業へと発展させる。
出勤簿も就業規則もない、定年がない、そして従業員をクビにしない。
そんな組織が成り立つのだろうか。
「もし潰れるようなことがあれば、ぼくは店員たちと共に乞食になる」
自分や会社の利益よりも、社員や日本という国の将来を想う・・・
そんな理想的な経営者が本当にいたのだろうか。
読み始めると信じられないようなことばかりで、
これは美化しすぎではないか。
こんな男が本当にいたのか。
神格化しようとしているのか。
気になって仕方がなかった。
しかし、そのうちこれが事実であろうがフィクションであろうが盛りすぎだろうが、そんなことはどうでも良くなってしまった。
この小説の主人公・銕蔵の生き様にすっかり惚れ込んでしまったのだから。
終戦時海外に重点を置いていた銕蔵の会社は、敗戦により多くの資産が失われ、会社の存続すら危ういのに誰一人クビにせず、皆で力を合わせて復興を遂げる。
戦地に赴いた店員の家族に給金を送り続ける。
そんな男だから、大金持ちや銀行がポンと大金を渡し、援助の手を差し伸べるのだ。
「店員は家族同然」という店主に応えるように、従業員たちも共に苦労し会社を支える。
学歴のあるエリートや重役でさえも、ときに泥だらけになりながら3K仕事を懸命にこなす。
次々に試練が襲いかかるが、苦悩しながらも銕蔵はどこまでも正しい道を突き進んでいく。
石油の利権に群がる大資本に正攻法で挑み、斬り込んでいく場面はなんとも小気味よい。
なんとすごい男だろうか。
なんという熱気だろうか。
特に下巻は感動の嵐に巻き込まれること必至である。
どこまでもこの男についていきたい・・・そう思わせる主人公・銕蔵。
己の正義を貫き通し、戦い続けた男。
今の世の中にこんな男がいてくれたらと願う一冊だった。
2013年2月24日日曜日
性愛空間の文化史
性愛空間の文化史
金益見著
ミネルヴァ書房
春を売る場所から娯楽施設へ。性愛空間の変遷。
初めてそういう空間に足を踏み入れたのは、16歳のときだった。
老舗M.Eのスイートルームを借り切って、女子10人ほどで女子会をしたのだ。
2階建ての豪華なその部屋で、何が楽しかったのかゴントラに乗り何往復もしたり、みんなでベッドに寝そべったりとはしゃぎまくった2時間だった。
特殊な椅子を見たのはその時が最初で最後だった。
今でもそんな女子会は楽しいと思うのだが、友人たちに声かけたら引かれてしまうかもしれない。
本書は、大学の卒業論文をまとめた「ラブホテル進化論」で美しい若い女性が…と話題になった著者が、大学院の博士論文を加筆修正してまとめたものである。
広告や警察白書・経営者のインタビューを基に、性愛空間の変遷を丁寧に追っていく。
江戸時代後期に男女が密会に利用した貸席「出会い茶屋」をルーツとして、狭い住宅事情を追い風に、人目につかない「性愛空間」は連れ込み・さかさくらげ…と呼び名を少しずつ変えながらどんどん進化していく。
アメリカでは車で旅するときに泊まるホテルであったモーテルが、日本では駐車場から直接部屋に入れ誰にも顔を見られないことから急速に発展した。
この頃(昭和40年代)から「玄人の女と男」というペアだけでなく、普通のカップルも増えていったという。
それだけ一般社会に溶け込んでいったのだ。
その後、回転ベッドや鏡などゴージャスさを前面に出したラブホテルが台頭し、性愛空間は連れ込んだり連れ込まれたりするのではなく、カップルで一緒に入るという感覚になっていく。
そうなると、ホテルを選ぶときにも女性の意見が取り入れられ、ゴテゴテのお城のようなホテルからシンプルなマンション風のホテルが作られるようになった。
最近は多様化し、ファミリーで泊まったりビジネス客にも対応したり、女子会プランがあるラブホも増えているらしい。
一方、シティホテルやビジネスホテルがデイユースとして休憩もできるようになっているのだから、ラブホとの境目が少しずつ曖昧になってきているようだ。
また、カラオケボックスなど二人きりになれる場所も多様化してきているため、「性愛空間」は生き残りをかけてまた新たな進化を遂げるのかもしれない。
なかなか勉強になった一冊だった。
海外事情やレンタルスペースなど性愛空間についての興味はつきないので、これからも著者の研究に注目していきたい。
金益見著
ミネルヴァ書房
春を売る場所から娯楽施設へ。性愛空間の変遷。
初めてそういう空間に足を踏み入れたのは、16歳のときだった。
老舗M.Eのスイートルームを借り切って、女子10人ほどで女子会をしたのだ。
2階建ての豪華なその部屋で、何が楽しかったのかゴントラに乗り何往復もしたり、みんなでベッドに寝そべったりとはしゃぎまくった2時間だった。
特殊な椅子を見たのはその時が最初で最後だった。
今でもそんな女子会は楽しいと思うのだが、友人たちに声かけたら引かれてしまうかもしれない。
本書は、大学の卒業論文をまとめた「ラブホテル進化論」で美しい若い女性が…と話題になった著者が、大学院の博士論文を加筆修正してまとめたものである。
広告や警察白書・経営者のインタビューを基に、性愛空間の変遷を丁寧に追っていく。
江戸時代後期に男女が密会に利用した貸席「出会い茶屋」をルーツとして、狭い住宅事情を追い風に、人目につかない「性愛空間」は連れ込み・さかさくらげ…と呼び名を少しずつ変えながらどんどん進化していく。
アメリカでは車で旅するときに泊まるホテルであったモーテルが、日本では駐車場から直接部屋に入れ誰にも顔を見られないことから急速に発展した。
この頃(昭和40年代)から「玄人の女と男」というペアだけでなく、普通のカップルも増えていったという。
それだけ一般社会に溶け込んでいったのだ。
その後、回転ベッドや鏡などゴージャスさを前面に出したラブホテルが台頭し、性愛空間は連れ込んだり連れ込まれたりするのではなく、カップルで一緒に入るという感覚になっていく。
そうなると、ホテルを選ぶときにも女性の意見が取り入れられ、ゴテゴテのお城のようなホテルからシンプルなマンション風のホテルが作られるようになった。
最近は多様化し、ファミリーで泊まったりビジネス客にも対応したり、女子会プランがあるラブホも増えているらしい。
一方、シティホテルやビジネスホテルがデイユースとして休憩もできるようになっているのだから、ラブホとの境目が少しずつ曖昧になってきているようだ。
また、カラオケボックスなど二人きりになれる場所も多様化してきているため、「性愛空間」は生き残りをかけてまた新たな進化を遂げるのかもしれない。
なかなか勉強になった一冊だった。
海外事情やレンタルスペースなど性愛空間についての興味はつきないので、これからも著者の研究に注目していきたい。
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