エロティック・ジャポン
アニエス・ジアール著
にむらじゅんこ訳
河出書房新社
フランス人女性ジャーナリストが見たヘンな日本。違うよ、そうじゃないんだよと言いたいけれど、これが彼女の分析なのだから仕方ない・・・のだろうか?
1969年生まれのフランス人女性ジャーナリストが、日本の様々な風俗について独自の視点から斬りまくった本の邦訳。
七夕・宝塚・やおい・メイドカフェ・ブルセラ・ラブドール・ハプニングバー・・・など、一般的なものからソフト、ハードなもの、超過激なものまで100以上の項目が図版と共に真面目に解説されている。引用文も、神話・紫式部から近松門左衛門、谷崎潤一郎・三島由紀夫・酒井順子など多岐にわたっている。
読み始めると、いきなり日本は「汚れたパンティを自動販売機で売る国」と定義づけられ面食らう。そして違和感と疑問でいっぱいになるが、「訳者あとがき」を先に読むと少しは納得できた。
著者は、日本のアニメ専門家として有名で、日本に心酔していたが、日本語は得意ではない。
それ故、参考・引用している文献は、英語・仏語の研究書に頼っているという。
そして、この本は、それらの研究書を読んだ著者自身の想像と自由な発想から生まれたものだと解説してある。
著者の友人だと言う日本人の訳者もこの日本社会の描写にしばしば戸惑いを覚えている。
そして、その戸惑いにこそ、本書が日本で翻訳出版される文化的意義があるという。
そう考えれば読み方も変わってくる。
「日本のエロ系サブカルチャーはフランス人からどう見られているのか」を知る本だということになる。
自分のことはなかなか客観的に見るのは難しく、欠点を指摘されると怒りを覚えるものだと思いながら読み進める。
確かに、「日本女性の美しさは、つつましさという美徳を前提にしている」という点は肯ける。現代の女性のことではなく、あくまで「ぐっと来るポイント」という話だが。
そのため、盗撮・パンチラ・恥じらいの方が、外国の挑戦的・直接的な映像等より日本人の好みに合っているのではないか。「Come on」と「やめて」の違いであろう。
キリスト教の原罪や、日本の土着信仰・八百万の神・死への考え方などと共に論じている部分は
なるほどと考えさせられた。
しかし、例えば七夕の項で「この日、女の子たちは織り姫に、機織りと裁縫が上手くなるようにと願う。一方、男の子たちは、書道の腕前があがるようにと願うのが習わしになっている」と定義づけられている。また、OLとは「1日に266回お辞儀をしなければいけない企業の飾りものであり、女中である」とされている。仲間由起恵を「最も胸の薄い女」と断定していたり、日本人ならこの文章に違和感を持つだろう。
こういった調子で様々な風俗を著者独自に考察していく本なのである。
書いてあることは、まるっきりの捏造ではなく、実際に少数とはいえ日本で行われていることなのだから認めることも必要なのかもしれない。
また、私自身も初めて知った項目もいくつかあり、新たな発見であった。
ただ、嘔吐ショー等一部の箇所では、不快感・嫌悪感でいっぱいになる。
声を大にして、これは日本でも極少数の人たちのことで、大部分はこんなこと見たり聞いたりもしたことない人たちだよ!と言いたくなる。
しかし、この本は約4000円という高額本にも関わらず、異例の売れ行きを見せ、
出版から5年たった現在でも順調に版を重ねているという。
ということは、アニメおたくやコスプレおたくの多いフランスで、日本に興味を持つフランス人たちがこの本を読み、日本について誤解する可能性が高いのではないか。
全てを信じ、日本人全員がこうであると思う人はいないだろうが。
私自身は興味深く読め、著者の努力に感服したが、一方で日本の明るいいい面もたくさん紹介してほしいと痛切に願った。
2011年12月29日木曜日
2011年12月23日金曜日
水晶玉は嘘をつく?
水晶玉は嘘をつく?
舞台は1950年代の英国。
片田舎にある広大な敷地の古いお屋敷に住んでいるあたし、フレーヴィア11歳。
我が家の財政が逼迫していると悩む父と、
いじわるな姉二人に囲まれてたくましく生きている。
姉たちにいつもいじめられているから、
いつかぎゃふんと言わせてやると機会をうかがっているの。
あたしの好きなことは、家の実験室で化学の実験をすること。
事件に遭遇して、大量の血を見たけど大丈夫。
だって化学の実験をしたことがあるから覚えているんだけど、赤血球というのは実は水分とナトリウムとカリウムと塩化物と燐の楽しい混合液が大半を占めているって知っているから。
そんな女の子が探偵役となる楽しいミステリーの第3弾。
原題は「A RED HERRING WITHOUT MUSTARD~マスタード抜きの燻製ニシン」
何の知識も持たずに読んだのだが、後で著者が70歳過ぎた男性と知ってびっくりした。
しかも、専攻は電子工学だったという。
執筆に専念するため早期退職したらしい。
そんな方が、 11歳の女の子を主人公に、3姉妹のバトルを描くってすごい!
読み始めて、なんと生意気な女の子だろう。
これなら姉2人に意地悪されても仕方ないのでは? と思った。
だって、姉の持ち物を勝手に持ち出したりした上、壊したり捨てたりするなんてひどい。
だけど、読み進めるうちに、「姉たちに負けるな!がんばれ!」といつの間にか応援していた。
賢く知識も豊富なませた女の子フレーヴィア。
勇気も人並み以上にあるけれど、やっぱり11歳。
「あたしのように科学的な考え方をする人間にとって、そういう話を鵜呑みにするのは難しかった」なんて言いながらも、水晶占いに出てきた亡き母の話に動揺したり、
子供らしいところがあちこちに垣間見られる。
「もうちょっと落ち着いて」って言いたくなる小生意気な女の子が魅力的に描かれているミステリーであった。
そして、舞台となる古いお屋敷。
地下室や家具の描写から、挿絵はないものの勝手に想像し、一人でうっとりしてしまった。
このシリーズは6作まで刊行されているので、次の翻訳が楽しみである
アラン・ブラッドリー
東京創元社
化学大好き少女が探偵役となるミステリーの第3弾。もうちょっと落ち着いてと言いたくなる小生意気な女の子が魅力的に描かれている。
舞台は1950年代の英国。
片田舎にある広大な敷地の古いお屋敷に住んでいるあたし、フレーヴィア11歳。
我が家の財政が逼迫していると悩む父と、
いじわるな姉二人に囲まれてたくましく生きている。
姉たちにいつもいじめられているから、
いつかぎゃふんと言わせてやると機会をうかがっているの。
あたしの好きなことは、家の実験室で化学の実験をすること。
事件に遭遇して、大量の血を見たけど大丈夫。
だって化学の実験をしたことがあるから覚えているんだけど、赤血球というのは実は水分とナトリウムとカリウムと塩化物と燐の楽しい混合液が大半を占めているって知っているから。
そんな女の子が探偵役となる楽しいミステリーの第3弾。
原題は「A RED HERRING WITHOUT MUSTARD~マスタード抜きの燻製ニシン」
何の知識も持たずに読んだのだが、後で著者が70歳過ぎた男性と知ってびっくりした。
しかも、専攻は電子工学だったという。
執筆に専念するため早期退職したらしい。
そんな方が、 11歳の女の子を主人公に、3姉妹のバトルを描くってすごい!
読み始めて、なんと生意気な女の子だろう。
これなら姉2人に意地悪されても仕方ないのでは? と思った。
だって、姉の持ち物を勝手に持ち出したりした上、壊したり捨てたりするなんてひどい。
だけど、読み進めるうちに、「姉たちに負けるな!がんばれ!」といつの間にか応援していた。
賢く知識も豊富なませた女の子フレーヴィア。
勇気も人並み以上にあるけれど、やっぱり11歳。
「あたしのように科学的な考え方をする人間にとって、そういう話を鵜呑みにするのは難しかった」なんて言いながらも、水晶占いに出てきた亡き母の話に動揺したり、
子供らしいところがあちこちに垣間見られる。
「もうちょっと落ち着いて」って言いたくなる小生意気な女の子が魅力的に描かれているミステリーであった。
そして、舞台となる古いお屋敷。
地下室や家具の描写から、挿絵はないものの勝手に想像し、一人でうっとりしてしまった。
このシリーズは6作まで刊行されているので、次の翻訳が楽しみである
2011年12月21日水曜日
SEX会話力
SEX会話力
溜池ゴロー著
小学館101新書
題名は刺激的だが、著者の人生訓がギュッと詰まった一冊。草食系男子にこそ読んでもらいたい。
著者は、1964年生まれで明治大学法学部を卒業後、800本近いAVを撮ってきた監督。
著者の言う「会話力」とは、相手を理解しようとする力・コミュニケーション能力のことだと
私は理解している。
最近よくあるハウツー本(読んだことはないが)の著者たちと溜池氏とは決定的な違いがあるという。
医師やセラピストは学術的・医学的な解説をするが、実践面で弱い。
男優やマッサージ師は体験の豊富さから実践的な解説をする。
ところが、彼らは自分以外の男女の実践の場をあまり見ないので、
男目線で独りよがりになりがちである。
そこへ行くと監督業は、男と女両方の立場を客観的に観察・分析をすることができると、
著者ご本人はおっしゃる。
言われてみればなるほどと納得する。
この本は技術の話ではない、そんな著者が女性への溢れる愛を語った本である。
構成的には、著者の半生、女性に対する姿勢・人生訓、業界コラム、妻との対談となっている。
さすが百戦錬磨の方だけあって、女性の気持ちをよく理解し、大切に想ってくれるということが
よくわかる。
自信満々で強くカッコよく見せようと思う男ほど、カッコ悪い。
わからないことはわからないと言い、コンプレックスもさらけ出して
女性に真摯に向かい合うことが大切と著者は説く。
その通り!と拍手を送りたい。
知らない土地で道に迷った時、一人であれこれ悩むより、人に聞くのが一番近道なのに、
お店で商品について店員さんに聞けばよくわかるのに、
恥ずかしい・そんなことも知らないのと馬鹿にされるのではないかと思ってしまう人も多いと思う。
しかし、自分をさらけ出すと心も楽になる。そして相手も心を開きやすくなる。
そう著者は言いたいのだ。
長年連れ添った妻に著者の言うことを実践しても、浮気を疑われるか、
何を今更と蹴飛ばされるか・・・
それより、急に妻に優しくすることは心情的に難しいだろうと女の私でも思う。
だからこそ、まだ若い未婚の草食系男子にこそ読んでもらい、将来的に実践してほしい。
だからと言って、女性は無条件に素晴らしいとも思わない。
相手をよく観察し、思いやることは男女問わず大切なことだと改めて思う。
「観察して慮ることが、コミュニケーションの基本です。」と著者は言う。
恋愛だけでなく他人と円滑な関係を築くことは社会上重要なことであろう。
ビジネスでも応用できそうな極意である。
溜池ゴロー著
小学館101新書
題名は刺激的だが、著者の人生訓がギュッと詰まった一冊。草食系男子にこそ読んでもらいたい。
著者は、1964年生まれで明治大学法学部を卒業後、800本近いAVを撮ってきた監督。
著者の言う「会話力」とは、相手を理解しようとする力・コミュニケーション能力のことだと
私は理解している。
最近よくあるハウツー本(読んだことはないが)の著者たちと溜池氏とは決定的な違いがあるという。
医師やセラピストは学術的・医学的な解説をするが、実践面で弱い。
男優やマッサージ師は体験の豊富さから実践的な解説をする。
ところが、彼らは自分以外の男女の実践の場をあまり見ないので、
男目線で独りよがりになりがちである。
そこへ行くと監督業は、男と女両方の立場を客観的に観察・分析をすることができると、
著者ご本人はおっしゃる。
言われてみればなるほどと納得する。
この本は技術の話ではない、そんな著者が女性への溢れる愛を語った本である。
構成的には、著者の半生、女性に対する姿勢・人生訓、業界コラム、妻との対談となっている。
さすが百戦錬磨の方だけあって、女性の気持ちをよく理解し、大切に想ってくれるということが
よくわかる。
自信満々で強くカッコよく見せようと思う男ほど、カッコ悪い。
わからないことはわからないと言い、コンプレックスもさらけ出して
女性に真摯に向かい合うことが大切と著者は説く。
その通り!と拍手を送りたい。
知らない土地で道に迷った時、一人であれこれ悩むより、人に聞くのが一番近道なのに、
お店で商品について店員さんに聞けばよくわかるのに、
恥ずかしい・そんなことも知らないのと馬鹿にされるのではないかと思ってしまう人も多いと思う。
しかし、自分をさらけ出すと心も楽になる。そして相手も心を開きやすくなる。
そう著者は言いたいのだ。
長年連れ添った妻に著者の言うことを実践しても、浮気を疑われるか、
何を今更と蹴飛ばされるか・・・
それより、急に妻に優しくすることは心情的に難しいだろうと女の私でも思う。
だからこそ、まだ若い未婚の草食系男子にこそ読んでもらい、将来的に実践してほしい。
だからと言って、女性は無条件に素晴らしいとも思わない。
相手をよく観察し、思いやることは男女問わず大切なことだと改めて思う。
「観察して慮ることが、コミュニケーションの基本です。」と著者は言う。
恋愛だけでなく他人と円滑な関係を築くことは社会上重要なことであろう。
ビジネスでも応用できそうな極意である。
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