2011年8月31日水曜日

往復書簡

往復書簡
湊 かなえ著
幻冬舎

手紙のやり取りのみからなる短編3つ。夢中になって一気に読みました。短編なのにちゃんと話がおさまっている。好きな作家です。

 


「告白」の著者の短編。
高校時代の友人の結婚式を機に、友人たちとの手紙のやり取りで5年前の「事件」の真相に迫る「10年後の卒業文集」
小学校の担任の先生と教え子の「事故」についての先生と教え子のやり取りの「20年後の宿題」
国際ボランティアで海外に行った恋人とのやり取りで、かつての「事故」を考え直す「15年後の補習」 の3編。

短編というと、どうしても終わり方が中途半端と思っていたが、 夢中にさせるストーリで、一気に読めました。

「手紙」のやり取りとはいえ、語り口調で、最初はよくわからないがどんどん真相に迫るという 「告白」と同じパターン。

有吉佐和子の「悪女について」も思い出しました。(高校時代大好きで何度も読んだ本です)
こういう形式の本が私は好きなんだなぁ。と改めて思いました。
いつもは、こんなの偶然すぎるとか、心の中で突っ込みながら読んでしまうのに、 この本は、そんなことすら思わず最後までどっぷり本の世界に浸れました。

だからと言って、冷静に考えると突っ込むところがないわけじゃないんだけど。
結末が、やりきれないまま終わるのが得意な著者ではあるけれど、最後はちゃんと まとめてくれていた。
1話目の女友達とのビミョーな関係はさすがと思った。

2011年8月29日月曜日

憚りながら

憚りながら
後藤 忠政著
宝島社文庫

山口組系の大物元組長の自叙伝。生い立ち・抗争・引退そして得度へと、波乱の半生をしゃべり言葉で綴った迫力の生きざま。すごい。





武闘派で知られた山口組系「後藤組」の元組長。

極貧の生い立ち、富士宮での愚連隊時代、兄弟のこと、
創価学会との攻防、大物右翼の野村秋介との出会いとつきあい、
渡米しての肝移植、そして得度。
また、文庫化に際して書き加えた東日本大震災のこと。

13章からなる迫力の自叙伝。


やっぱり、どんな組織であろうと、上まで登る人はすごい。

その筋の方を最近は見かけることすらしない生活をしている私。
実際お会いしたら、オーラがすごいのではと想像してみる。
一度お話しできたら・・・無理だけど。

本来任侠とは、自警団や用心棒のようなもので、警察も黙認してある意味頼っていたはず。
それが、愚連隊・経済やくざなどと多様化し、素人さんに迷惑をかける組員くずれが増え
形が変わってきたのだろう。
窃盗、強盗、薬物などは、下っ端や、破門された元組員がやっているんだろうけど、
余計イメージが悪くなる。
後藤氏も言っていたが、秋葉原の事件や、幼女の事件など、理解しがたい事件をたくさんの堅気が起こしている。
やくざが必要悪であった時代はとっくに終わっているんだろうけど、
やくざのみが諸悪の根源というのとも違うような気がする。

暴対法もできて、それはそれはその筋の方々には行きにくい世の中なのでしょう。
現在、ここまで締め付けているとは。ヤクザと知って、取引をしただけで、とがめられるなんて。


奥さんもすごい。ほんまもんの「極妻」。かっこいいと言ってはいけないのかもしれないが、
かっこいいと感じた。

元組長の話し言葉で書かれていて、業界用語も少しだけ勉強できる。
合間に解説が挟まれているのもわかりやすくて、読みやすかった。

自慢話に聞こえてしまうのは仕方のないことでしょう。

2011年8月28日日曜日

檻の中の少女

檻の中の少女
一田 和樹著
原書房

第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。著者の経歴を生かしたサイバーセキュリティを題材としたミステリー。一気に読ませてくれます。




企業のシステムがらみのトラブル解決を仕事としている38歳の主人公の君島。
ある時、老夫婦から依頼を受ける。
息子が自殺した。
自殺支援サイト「ミトラス」に殺されたのではと疑問に持ち、調べてほしい。
個人からの依頼はあまり受けたくなかったが、金払いがよさそうなので引き受ける。
礼儀知らずの女子高生や、敬語を使う不思議ちゃんの彼女も出てきて・・・


マンガを読んでいるようで、一気に読めました。
サイバーセキュリティという新しい分野の話でなかなか興味深かった。

最初から怪しすぎる伏線が・・・
ただ、犯人はわかっても、理由や背景、題名の意味は最後まで読まないとわからないので面白かった。

軽い調子の文章で書かれているが、重たいテーマも出てくる。
余韻を残して終わっているので、恐ろしさも残る。
軽いだけの小説ではなかった。

しかし、私のようなPC初心者は、狙われたらあっという間に情報を丸どりされてしまうのだろうなと、だんだん怖くなってきた。
気をつけないと。