2017年4月5日水曜日

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~

ついに完結‼ビブリア古書堂シリーズの最終巻。色々楽しませてもらいました!ありがとう、栞子さん。

「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」
三上延著
KADOKAWA




北鎌倉の駅前ににひっそり佇む古本屋「ビブリア古書堂」。
店主の栞子さんは、美人で巨乳。
そして極度の人見知りだが、古書に関しては膨大な知識を持ち、次々と本に関する謎を解いていく。

そんな人気シリーズも、これで最後かと思うと寂しくて、読み始めるのがもったいない・・・
なんて、思わんがな!
だって、前作から2年以上経つんだもん。
待ちくたびて、細かいストーリーを忘れちゃったじゃないの!
復習してから読まなきゃならなかったんだから!


最終巻ということもあり、色々な思いを巡らせながら読み始めると、いつも通りすぐに夢中になった。

今回の題材は、17世紀に刊行されたシェイクスピアのファーストフォリオ、戯曲を集めた最初の作品集である。(フォリオとは2つ折り本の意味。)
過去には6億円で取引されたこともあるという、今までとは規模が違う高額なものだった。

祖父が仕込んだ悪質な仕掛けに翻弄される栞子さんの様子が、恋人である大輔くんの視点から描かれている。

そこに、人物相関図を見なければ理解できない複雑な家族関係や、対立している母親との関係、そして栞子さんと大輔くんの恋愛が絡む。
祖父の弟子だったという怪しげな人物も登場し、伏線を回収しながら最終巻にふさわしい壮大なストーリーとなっている。

ああ、面白かった!
このシリーズ、堪能させてもらいました!
思えば、せどり屋などの専門用語や、本や古書の知らなかった世界を教えてくれたのもこのビブリアだったなぁ。

栞子さんは必然性もないのになんで巨乳なんだ!
大輔くんだっていつまでもアルバイトしてないで就職活動したらいいのに!
二人はいい大人の恋人同士なのに、なんでいつまでもモジモジしてるの?
などと、外野からヤジを飛ばすのも、このシリーズの楽しみの一つだったなぁ。

こうなってくると、母親との対立が消化不良とか細かいことなんか気にならない。
巨乳だっていいじゃないか、にんげんだもの。
恋愛だって人それぞれ。みんなちがってみんないい。
「みつをとみすゞと私」のような気になってくるのだ。

あとがきによると、シリーズ本編は完結したけれど、番外編やスピンオフという形で続くのだそう。
栞子さんたちは結婚して、いつまでたってもモジモジしたラブラブ夫婦で、二人の子どもはどうせ可愛くて本好きなんでしょ!
などと妄想を楽しみながら待ちたいと思う。


※ラノベということで偏見があるかもしれませんが、本に絡んだ謎解きや古書の世界が本当に面白いおススメのシリーズです。
確かに入り口は軽いですが、奥が深いのです。
実在の書籍を題材とした謎解きは、知識欲を刺激し、また読書欲をかきたてることでしょう。
突っ込みを入れながら読むのもまた一つです。
読み始めたら、2巻3巻と進むにつれ、ズブズブとはまっていく物語です。
最終巻が出版されたこの機会に、どうぞ一気読みしちゃってください。
(㊟個人の感想です。)

この音とまれ! コミック 1-13巻セット

筝にかける青春!全国1位を目指す箏曲部の物語。

「この音とまれ!」
アミュー著
集英社



「この漫画、面白いから読んでみて」
娘のそんな甘い言葉にのせられて手に取りました。
娘の思惑通り、1、2巻を読み終わると「13巻まで出てるの?じゃあ、お金渡すから大人買いしてきて。」と口走っていたのです。
だって、キラキラした青春と感動が詰まっている素敵な物語なんですもの‼

「この音とまれ!」は、「ジャンプスクエア」に連載中の、高校の箏曲部を舞台とした物語です。
先輩の卒業によって部員がたった一人となった時瀬高校箏曲部は、廃部の危機に直面していました。
そこへ、警察沙汰を起こした不良やその仲間、家元のお嬢様などが入部し、全国大会1位を目標に頑張るという青春コミックです。

主な登場人物を紹介しますね。

倉田武蔵・・・箏曲部の部長。同級生の男子からバカにされ、自信をもてないでいた。しかし、一筋縄ではいかない新入生たちを束ねていくうちに、だんだん頼もしく成長していく。

久遠愛(くどうちか)・・・親に見捨てられ自暴自棄になっていた。ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけていたが、箏の職人である祖父が創設した箏曲部に入部し、真剣に筝と向き合うようになる。イケメン。(※個人の感想です。)

鳳月さとわ・・・箏の家元である鳳月家のお嬢様だが、今は破門されている。口も性格も悪い美少女。巨乳。(→少年漫画ということから、必要な要素なのだろうか?)

滝浪凉香・・・数学教師、箏曲部の顧問。音楽一家のサラブレッドだが、嫌気がさし音楽から遠ざかる。やる気がなく投げやりだったが、部員たちの努力する姿を見て、だんだんと変化していく。イケメン。(※あくまでも個人の感想です。)

その他、久遠愛についてきただけで筝には何の興味もなかった仲間たち、部を引っ掻き回すためだけに入部した女子など、寄せ集めのまとまりない部員たちが、全国1位を目指していくのです。

それぞれがそれぞれの事情を抱えながら、筝に情熱を注ぎ懸命に頑張る姿は、眩いばかりです。
そのキラキラした青春がとても羨ましいのです。

肝である演奏シーンの描写ですが、当初はイマイチ感動が伝わってきませんでした。
重要な場面だからもう少し丁寧に描いて欲しいなと思っていましたが、ストーリーが進むにつれてそれも解消され、圧巻の演奏シーンが続き、引き込まれていきます。
初めてみんなの音が1つになったとき。
音1つで会場の雰囲気が一変するとき。
思いをのせた演奏が届いたとき。
ああ、筝の音色っていいなぁと感じるのです。実際には聞こえてないのだけれど(^_^;)

著者のエミューさんは、3歳から筝を始め、筝奏者に囲まれて育ったそうです。
高校箏曲部で指導しているというお母さま、お姉さまにこの連載について相談もされているといいます。
だからこそ、厚みがある読み応え十分な筝描写ができるのですね。
作中に出てくるオリジナル曲は、お母さまとお姉さまが作曲されていて、実際に聞くことができます。
・初めてみんなで弾いた「龍星群」
・全国予選のために練習している「久遠」

予選で出会ったライバルたちとその背景も描かれており、だんだん壮大なストーリーになってきました。
これから彼らがどうなっていくのか楽しみです。

※筝と琴が違う楽器だと初めて知りました。
筝(こと/そう)は、柱(じ)という可動式の支柱を動かして音の高さを変える、
琴は柱がなく、弦を抑える指のポジションで音の高さが変わる、
という違いがあるそうです。

※3/3に14巻が発売されました。

※無料試し読みやヴォイスコミックもあります。

〆切本

大先生方、笑っちゃってごめんなさい。皆さんも〆切に苦しんでいたのですね。なんだか安心しました。



本書は、夏目漱石、谷崎潤一郎、泉麻人、西加奈子…大作家から現代作家、漫画家まで、〆切にまつわるエッセイ、手紙、漫画等を集めたアンソロジーです。

編集者にカンヅメにされる作家。
憧れませんか?
いえいえ、売れっ子作家になりたいわけではなく、高級ホテルで「お願い、待って。もうちょっとだから‼」などと呟いてみたいなぁと思っただけです。
でも、本書を読んだらそんなお気楽発言なんかしちゃいけないのが、よぉくわかりました。
だって、皆さん本当に笑っちゃうほど、必死に困っているんですもの。(笑)

「風邪気味なもんで、今日中になんとか」
「風邪は治ったんですが、ワイフが風邪ひいちゃって、家事をしなくちゃいけないもんで、今日中になんとか」
「ワイフの風邪は治ったんだが、ワイフの祖母が風邪ひいたんで、実家に看病に行ったら、その間に猫が風邪ひいちゃって…」
というミエミエの言い訳をするのは、高橋源一郎氏。
それを聞いた編集者はどう思ったんでしょうか。

遅筆で有名だった井上ひさし氏は、編集者に「殺してください」と申し出たそうな。
そんなこと言われても困りますよね。

そんな言い訳や、苦労話が90本も収められています。
人が苦しんでいるのを、笑いながら読んでしまってごめんなさい。

「原稿が遅れているいいわけをどうしようかずっと考えているので原稿を書く暇がない」とお嘆きの作家の皆さん、そんな暇があったらとっとと書いてくださいな‼
そう思ってしまうのは、編集者と素人だけなのかもしれません。

編集者とはこんなにも大変な仕事なのかと、同情の念を抱きます。
(吉村昭氏曰く、「締め切り過ぎてやっと小説をとった時の醍醐味は、なににも換えられないな」という編集者もいるらしいですが)
どうぞその苦しみを吐き出して、苦労話をお書きください。
編集者からみた「〆切本」も笑える…、いやいや、売れると思うのですが。

「締め切りが迫らなければ考える気がしない」とおっしゃる山田風太郎氏。
モチベーションや集中力のために、そして発売日や大人の事情のために、〆切が必要なのはわかります。
ということは、今もどこかで苦しんでいる作家さんがいるのでしょう。
どうか、編集者たちを苦しめずに早く仕上がりますように、お祈り申し上げます。

(でも、ちょっとは高級ホテルでカンヅメにされて「あー、書けない!」というポーズをしてみたいかも。)


※何人かの方は、〆切前に書き上げるとおっしゃってました。
性分だそうです。
私も夏休みの始めに宿題を終わらせてしまうタイプでした。
でも高校時代、原稿用紙80枚の小説を書く「80枚創作」という課題には苦労しました。
〆切日の通学電車の中で仕上げた思い出があります。
※恩師のエッセイも載っていました。先生はきっちりタイプだったのですね。