2011年7月17日日曜日

宝塚ファンの社会学 スターは劇場の外で作られる

宝塚ファンの社会学 スターは劇場の外で作られる
宮本 直美著
青弓社





宝塚歌劇団のファンクラブに属していた社会学者の著者。劇場前での入り待ち・出待ち、ガード、お茶会など、部外者にもわかりやすく説明した本。

宝塚って見たい見たいと思っていながら、一度も見たことない私。
これを読んで、そういえば昔に日比谷の宝塚劇場のそばで、おそろいの服を着た人たちがたむろしていたなと思い出しました。

実際自分が宝塚にはまるかどうかは別として、ファンクラブに入ったら、そのクラブ活動にはまってしまうかもと思わせる内容でした。

実際に、熱狂的なファンであるか否かとは関係なく、貢献度によるポイント制、「良い席のチケット」という報酬、引退という終わりの見えているからこそのつっぱしり。
そういったことが分かりやすく書いてありました。

宝塚って、卒業した後も、ずっと「学年」がついてまわるなど知らない世界が盛りだくさん。
著者はいう「そこにあるのは、熱心なファンがスターに近づこうとして、あるいはスターの役に立とうとして、個人的に盲目的に入れ込んでいる姿ではない。
その社会内の空気を読みながら、ファンクラブとしてどのように良好なポジションを維持できるかという目標に従って、合理的に行動する人々の姿である。」と。

生徒(宝塚の出演者はこう呼ばれる)個人のファンクラブの中でも、代表から始まって、明確なヒエラルキーが存在する。
また、それぞれのファンクラブでも、トップスター・2番手・スター路線の生徒・娘役などによって、これもまた、明確なヒエラルキーが存在する。
それは、チケットの入手など、様々な微妙な思惑によって秩序が保たれている。
そういったことが、わかりやすく書いてありました。


しかし、ファンクラブに入って活動している人は大変。
お金も時間もかかるし。子育て終わってお金も余っているマダム達や独身の人たちがが中心なのでは?(著者は、働いている人が、休みや会社帰りに駆けつけて活動していたと書いていたが・・・)
やっぱり、結婚して子どもがいる人には難しいと思う。
旦那さんの理解も必要だし。
そこまでのめりこめるのは、うらやましい。
韓流や、ジャニーズにもはまれない私。
目をハートにしながら、好きな人の話をしている友人たちを見て、生き生きしているし、きっと若い気持ちでいられるんだと思う。
チケット取れたら、見に行ってみようと思わせる本でした。

2011年7月12日火曜日

知られざる魯山人

知られざる魯山人
山田 和著
文春文庫



現代日本料理の創始者である北大路魯山人は、陶芸、書、篆刻など様々な分野で活躍した。
著者の父は、魯山人と親しく交際し、家の普段使いの食器は全て魯山人作だった。
ところが、魯山人の死後、父は所有の品をほとんど処分してしまう。
関係者80人超への取材、現存資料のほぼすべてにあたった600ページもの渾身の作。
第39回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。

すごい。
読むのも大変だったけど、著者はどんだけ苦労したの?

魯山人と聞いて、何をイメージする?
頑固な陶芸家?
こだわりの食通?
ってだいたい「美味しんぼ」の海原雄山のことしか頭に浮かばなかったけど。
なんとなく、金持ちのボンボンで子どもの頃からお手伝いさん付きで、豪華な食事食べ放題って思ってた。

でも、不幸な生い立ちで、本当の父が誰なのか未だにわからないなんて。
6歳の幼さで養父母に気に入られようと炊事を買って出る。
しかも、褒めてもらいたくて、どうしたら美味しく炊けるか研究までする。
数種類のコメを混ぜる・水きり時間・炊きたてにこだわる・・・いまどきの主婦だってそんなことは考えずに惰性で炊いてるのに。
そこが魯山人たるゆえんだろう。

そして、美の追求。天才的な空間把握の才能と、手先の器用さもあったのだろうが、薄幸の育ちも関係しているのではないかと思われる。
書・篆刻・そして陶芸。誰もが認めるその才能。
だけど、頑固おやじ。
今近くにいたらどうだろう?
やっぱり才能は認めても、ついていけない、なんで怒鳴られなきゃならないの?って遠ざけるだろうな。


バブルの頃に生きていたら、おもしろかったのでは?
豪快に飛行機で世界中飛び回って、美味いもの探しなんてしてそう。

実際に魯山人の作品を見てみたい。
これだけ作品を残していたら、店の看板等で見たことがあるのかもしれないけど。
でも、著者はすごい。
魯山人の器ばかりで食事していたなんて。
それも凄いけど、この膨大な資料を整理して、この本を書き上げたのはもっとすごい。

2011年7月4日月曜日

江戸の卵は1個400円!モノの値段で知る江戸の暮らし

江戸の卵は1個400円!モノの値段で知る江戸の暮らし
丸田 勲著
光文社新書




大工の年収317万円、裏長屋の家賃8000円~12000円、木綿の古着2000円、居酒屋の飲み代700円~1400円、芝居小屋入場料2000円、不倫の慰謝料96万円・・・

江戸っ子の暮らしを今の貨幣価値に直すことで江戸の暮らしが見えてくる。
町人文化が花開いた文化・文政期の諸物価を円に換算していく。

江戸で暮らしてみたいと思ってしまうような本。
エンゲル係数の高さにびっくりして、シンプルに暮らすとはこういうことかと考えさせられる。
火事が多いので、必要最低限の物しか持たず、安普請。隣の会話も聞こえ、プライバシーや個人情報保護などかけらも見当たらない町人文化。
汚物も灰もすべてリサイクル。
ある意味成熟した世の中だったのかも。

円換算された色々な値段を眺めているだけで、江戸時代にタイムスリップしたように感じられる。
江戸に行ったら、どんな職業になってみたい?
やっぱり花魁?
でもなかなか吉原から出られないというし、大工のおかみさん?
子ども背負って井戸端会議とか・・・


読む人それぞれ想像の世界へ連れて行ってくれそうな本でした。