2014年2月19日水曜日

海賊女王 上下

皆川博子著
光文社

これぞ読書の醍醐味!!16世紀のアイルランドを舞台に活躍した、誇り高き海賊女王の物語。



(上下巻あわせて)

夢中になれる小説が好きだ。
先を知りたい、早く続きが読みたいと、時を忘れて読みふけるような。
読んでいる間は、嫌なことも忘れて本の世界にどっぷり浸っていられるような。
そんな小説に出合えた時、ささやかな幸せを感じるのだ。

そして今回、この「海賊女王」を読み、読書の醍醐味を味わうことができた。
本書は、16世紀に実在した女海賊・ グラニュエル・オマリー をモデルにした壮大な物語である。
海賊女王の波瀾万丈の生涯を、従者であるアランの視点から描いていく。

16世紀のアイルランドで生まれたグラニュエル・オマリー、通称 グローニャ は、幼い頃から活発で、クラン(氏族)の族長である父と共に海賊船に乗り、その後自ら船団を率いて「海賊女王」と呼ばれるようになる。
グローニャは、イングランドの支配に抵抗し、クラン同士の争いに巻き込まれながらも、自分のクランを守るために戦い続けていく。
私利私欲のためではなく、クランのために率先して戦う強い女なのである。
騙し騙され、ときには女を武器に妖艶な魅力を振りまきながら、命をかけて戦い続け、荒くれ男たちから絶大な信頼を得ていく。

一方、もう一人の女王・イングランドのエリザベス女王もまた、煌びやかな宮廷で、噂や陰謀・老いと戦っていた。

同じ年に生まれた二人の女王。
女王という孤独な鎧を身につけている女。
そんな女の波乱に満ちた物語である。

なんという瑞々しさだろうか。
荒々しい男たち、波しぶきや血しぶきが飛び交う戦場、苦しくても逞しく生きる人々。
生き生きと描かれている彼らの中に、私も飛び込んでしまったような気になってくるのだ。
そして、歴史の渦に巻き込まれながらも芯を貫き通した海賊女王に「どこまでもあなたについて行きます。」とひれ伏したくなってくる。

皆川博子さん(83歳)は、現存しているアイルランド・クレア島にあるグローニャの城まで、取材のため足を運んだのだという。
そのバイタリティと少女のような想像力には、驚きを禁じ得ない。

もしかしたらあなたは、本書を手に取り、上下巻で1000ページ超の分厚さに怯んでしまうかもしれない。
冒頭の登場人物一覧を見て、73人という人数の多さに驚き、読むのを躊躇するかもしれない。
読み始めて、見慣れない単語や地名、複雑な人間関係に戸惑い、放り出したくなるかもしれない。
でも、それはもったいないことだ。
もう少し進めば、読むのを止められなくなってしまうのだから。
極上の物語、そして大人の愉しみが待っているのだから。

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