2013年9月29日日曜日

宰領: 隠蔽捜査5

今野敏著
新潮社

主人公は、四角四面の警察官僚。だけど、ちょっぴりお茶目でかわいいお方なの。



スピンオフ作品もある人気の隠匿捜査シリーズ。
このシリーズの魅力は、なんといってもキャリア警察官である主人公の竜崎にある。
私利私欲とは無縁、四角四面、原理原則を重んじ、人付き合いが苦手。
「変人」「唐変木」と言われている男。
職務に忠実で、保身や出世のために行動する警察官たちを横目に、上司になびくわけでもなく黙々と自分のやるべきことを合理的にこなしていく・・・
ああ、ダメだ。
かっこよくてお茶目でかわいくて素敵な人なのに、残念ながら私には彼の魅力を伝えられない。

今回の事件は・・・
降格人事により、キャリア官僚ながら現在は大森署の署長を務めている竜崎。
衆議院議員の牛丸が誘拐され、運転手が他殺体で発見された。
牛丸の車が発見されたのは大森署管内だが、誘拐犯が潜伏しているのは神奈川県内だとわかり、神奈川県警に協力を仰ぐことになった。

警視庁と神奈川県警が対立しようとも、上司の命令に逆らってでも、竜崎は事件解決に一番合理的だと思う方法を選択していく。
ノンキャリアの警官が突っかかってきても、カッとなるのではなく冷静にどうすればいいのか判断していく。

現在は降格人事のため署長をしている竜崎が、実はキャリア官僚で階級は警視長であり、刑事部長とは幼馴染みで同期の仲だとわかった時の、周りの驚く様子はとても痛快で何回読んでも面白い。
これは、水戸黄門が印籠を出したとき、浅見光彦の兄が警視監だとわかったときと同じだ。

今回はまさかの大どんでん返しもあり、シリーズ最高の作品ではないだろうか。
事件は独立しているため本作だけを読んでも楽しめると思うが、竜崎のキャラや生い立ちなどの説明がほとんど書かれていないため、未読の方はシリーズの最初から読むことをおすすめする。

「転迷―隠蔽捜査4」のレビュー

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