2012年3月6日火曜日

警官の条件

警官の条件
佐々木 譲著
新潮社

親子3代を描いた傑作長編「警官の血」の第2弾。 警察小説好きの方、必読の一冊。



戦後の闇市から現代までの警察官3代を描いた傑作「警官の血」は、2008年度の「このミステリーがすごい!」で第1位になり、 2009年にテレビ朝日でドラマ化された。
その中で3代目の警察官として描かれていた安城和也を主人公とした警察長編小説。

捜査のため裏社会に密着し独自の情報ルートを持つ加賀谷。
主人公・安城和也は、上からの命令で加賀谷を素行調査し、「売る」。
そのため、加賀谷は退職そして逮捕される。
裁判で加賀谷は、上司や暴力団について一切口を割らず伝説の人となり、今は漁村で釣り船屋を経営し静かに暮らしている。
一方、覚醒剤の取引を巡り「何か」が変化してきているようで、売人が消されたり、
ブツがだぶついたりしているが、理由はわからず成果も上げられない。
密売組織の元締めは誰なのか?
そして警官に必要な条件とは?


「警官の血」では、警官の使命・父と子の確執に焦点を当てていたが、この作品では、
警察内部の確執と葛藤が描かれている。
500ページ超の大作だが、間延びすることもなく読者を夢中にさせる力はさすがである。

警察小説ではお約束の警察内部の組織間対立が、この作品でも描かれている。
長編ということもあり、心の襞まで丹念にあぶり出しているため、読者も感情移入しやすい。
また3代目安城和也の、やる気はあるが空回りする様子、揺れ動く様子も細やかに書かれていて、ヒーローでない・生身の人間臭い警官像に好感が持てる。
その丁寧な描写により、前作「警官の血」同様、壮大な人間ドラマに仕上がっている。
追跡調査の緊迫した様子、伝わってくる緊張感、誰が味方で誰が黒幕なのかわからず、
最後まで目が離せない。
そしてラストでは、感動のホイッスルが鳴り響く・・・

「警官の血」を未読の方でも十分堪能できる内容だが、読んでからの方が深みを増すストーリだと思う。

「気骨のある」とか「男の色気」という言葉がぴったりくるような、手応えのある小説であった。

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