2012年2月17日金曜日

江戸歌舞伎役者の<食乱>日記

江戸歌舞伎役者の<食乱>日記
赤坂治績著
新潮新書


江戸の歌舞伎役者が書いた自伝の中から、食に関する部分を解説した本。当時の豊かな食生活がわかり、面白い。



幕末から明治初期を生きた歌舞伎役者3代目中村仲蔵(1809~1886)は、自らつけていた日記を基に「手前味噌」と題する自伝を残した。
そこには、食べ物についての記述が多かった。
そこで、著者が「手前味噌」の中から食にまつわる部分を中心に抜粋して、さらに当時の食事情を他の文献も参考にしながら記している。
江戸の大スターがグルメレポーターとなり江戸時代のグルメを案内してくれる本である。
著者は、1944年生まれの演劇評論家・江戸文化研究家。

食いしん坊を自認している仲蔵は、歌舞伎役者として江戸や大坂だけでなく
伊勢、糸魚川、信濃、越後、越中などあちこちを旅していた。
各所の名物を食べたり、おいしいものだけでなく時にはハズレに当たったりしている。
また、盛り付け方に工夫をしている様子や豊かな食生活が窺われ、感心する箇所もあった。

獲れたての鮎の唐揚げや牡蠣の雑炊など、表現力豊かに紹介してくれるので、
読みながら食べたくなってしまって困る。
中でも私が一番おいしそうと感じたのは、
タケノコを土や皮が付いたまま縦に割り、味付け溶き卵を塗ってまたくっつけて
縄でぐるぐる巻きにし、それを熱い灰の中へ突っ込んで焦がすという物。
例えようもないほどのおいしさだったという。

また、鶴の肉は大坂の庶民も食べていたという今では考えられない話も出てくる。

食べ物だけでなく、江戸時代の風俗や暮らしぶりも描かれているので、
江戸を舞台にした小説を読むのが好きな私は、「なるほど」とか
「あの本に出てきたのはそういう意味か」等と思いながら楽しく読めた。

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