遠藤徹著
角川書店
この本、凶暴につき・・・
夏という季節は、人をいつもと違う自分に変えてしまうのかもしれない。
昨夏は、暴力的な性を描いた「城の中のイギリス人」を読んでしまった。
そして今年は、普段なら手を出さない「エログロホラー」というジャンルのこの「姉飼」を借りてきてしまったのだから。
本書は、第10回日本ホラー小説大賞を受賞した表題作「姉飼」など、4編が収録されている短編集である。
【姉飼】
脂祭りの夜に、出店で串刺しにされ泣き喚いている「姉」を見た時から惹きつけられてしまったぼくは・・・
脂祭りって何?
「姉」って人間じゃないの?
っていうか、太い串で胴体の真ん中を貫かれているのになぜ生きていられるの?
などという私の疑問は置き去りにされながら、話はどんどん予想だにしない方向へ進んでいく。
【キューブ・ガールズ】
代金2万円の小さな四角い箱に好きな情報をインプットしてお湯で戻すと、あら不思議。
好みの女の子が出来上がる。
しかも、「○○子と××美と△△を足して3で割って小林ひとみの雰囲気で」といった客のわがままな要望に応えてくれるのだ。
小林ひとみとはちょっと古いなぁ。
それなら私は「インパルス堤下の顔と声で、体は・・・」と妄想しているうちに、意外な結末へと向かう。
【ジャングル・ジム】
公園のジャングル・ジムは、真っ直ぐで隠し事のない性格の気のいいやつ。
訪れる人々の悩みに耳を傾け、心の底から共感してあげる毎日を送っている。
そんなジャングル・ジムが恋をした。
デートして、あんなことやこんなことまでするのだ。
ど、どうやって?という私の疑問はまたまた無視されたまま、悲しい結末へ・・・
【妹の島】
温暖な島で果樹園を営んでいる吾郎。
体にオニモンスズメバチが卵を産みつけ体内で孵化したため、大量の幼虫が彼の体をさまよっている。
眉間に皺を寄せながら読んでいくと、人間の業とは?という深くて重たいテーマにぶち当たる・・・かもしれない。
なんという吸引力だろうか。
読み始めたら最後、私の存在など完全に無視されて、「イヤよイヤよ」と言っているにもかかわらず、ひたすら引っ張っていく。
確かにエロくてグロい。
しかしホラー度が高く、悲鳴をあげたくなるほどではないが後からじわじわした恐怖が襲って来る。
奥が深いのだ。
「城の中のイギリス人」と比較すると、エロ度は1/10、グロ度は同程度、そしてホラー度は10倍という感じだろうか。(当社比)
う〜ん。やっぱり夏は危険な本を読みたくなる季節なのかもしれない。
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