秋田吉祥著
東研出版
「急ぐと失敗してたどり着けないかも知れないが、ゆっくり行けば必ずたどり着く」
(ネパールの格言)
書影
音楽活動をしていた著者は、「のんびり人生を見直してみたい」と友人から紹介されたネパールを訪れ、惹かれていく。
その後、ネパール人と結婚し、絵師を集めカトマンズにマンダラ工房を開く。 ある日、見慣れぬ民族衣装を着た素朴な姉妹と出会う。 それがタライに住むタルー族(Wikipedia )との出会いだった。 本書は、そんなタルー族に魅せられてタライに何度も足を運ぶことになった著者が見た、タルー族の温かい生活が描かれている。 ネパールとインドの国境に位置するタライ。 そこは、池や田んぼにたくさん魚が泳ぎ、米の栽培が盛んな豊かな土地であった。 著者は、姉妹の帰郷について行き、タルー族の人々、そして「タルーアート」の美しさの虜になる。 タルー族の女性が家の土壁などに描く、動物や植物が単純化されたカラフルでファンタジックな絵「タルーアート」。 温かみがあり、見るものの心を和ませるような優しい絵である。 彼女たちは、小さい頃から絵を描いていたのではなく、絵の経験がないまま結婚したあと、いきなり素敵な絵を描きだすのだという。 試しに姉妹に鉛筆でヒンズー教の神の絵を写させてみると、ほとんど経験がないにもかかわらず簡単にリアルに写してしまったという。 芸術系の才能は幼い頃から鍛錬しないと開花しないと思い込んでいた私には驚きの記述だった。 生まれた時から周りに絵が溢れ、描く姿を見て育ったからだろうか。 タルー族はどの人も大食漢で、子供も女性も男性の著者よりずっと量を食べるのだという。 菜穀物中心の大量の食事と労働のせいか、彼らの便は硬すぎず柔らかすぎず、健康的な良い色で臭くないという。 これは「大便通」 に載っていた理想的な便ではないか。 また、働き者のタルー族はきれい好きでもあり、行き届いた清掃のためか著者は村でダニやノミ・南京虫に悩まされたことはないという。 優しい彼らは欲がなく向上心もあまりないためか、給料全部をお土産に使ってしまうということもあったが、読み進めるうちに著者がタルー族に魅せられたわけがよくわかる。 本書の発刊から何年も経っているので、著者はきっと今頃もっとタルー族と深く交流しているのではないか、そう思うとその後のタルー族との交流をぜひ続編として知らせて欲しいと願う。 |
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