ステーキ!世界一の牛肉を探す旅
マーク・シャッカー著
野口深雪訳
カナダ人ジャーナリストが、おいしいステーキを求めて世界を駆けまわる。挙句の果てには、自分で牛を育ててしまう体験記。食について真剣に考えさせられる良書。
著者はカナダ人ジャーナリスト。
スコットランドではチーズケーキのようにフォークでスライスできるステーキ、
フランスでは一流シェフによる干し草ソースのステーキ、
我が日本では松坂・神戸の超霜降り肉と、あちこちでおいしそうなステーキを堪能する。
世界をめぐり、ステーキを食べまくり、その総重量なんと45kg。
そして、挙句の果ては、自分で牛を育て食べてしまうという体験記。
「世界一の牛肉を探す旅」と聞いて、楽しいエッセイなんだろうなと思ったが、軽い本ではなかった。
ステーキに関して豊富な取材で、栄養学、科学的分析、歴史、遺伝・・・等の観点から、多角的に考察した良書だったのである。
ただ、避けては通れないはずの狂牛病については「騒ぎがあった」の一言のみだったのが残念だった。
テキサス---ステーキの本場とも言えるアメリカから旅は始まる。
本来牛は、草を食み、ゆっくり育っていく。
それを、大量生産で安価になったとうもろこしを蒸してフレーク状にしたものを餌として与え、
抗生剤・成長ホルモンを投与する。
そうして育った牛の肉は、どれも同じような味がするという。
昔はおいしく感じていたステーキが、最近はどうしてこんなに味気ないのだろう・・・
そんな疑問から、多様な品種や飼料の違いと肉の味との関連を探っていく。
草を与え、ゆっくり育てばおいしい肉ができるという簡単な問題でもないらしいが、
アメリカの穀物飼料は世界を席巻し、他の国でも牛の餌となっている。
そのうち、世界中の牛が同じ味になってしまうのか?
最高のステーキとは最高の肉であると著者はいう。
最高の肉はソースでごまかされない素材本来の持つ脂・風味を味わうことができる。
そのため大切に育て、死の直前まで牛にストレスを与えないようにすることが大切らしい。
牛も、太陽の光をいっぱい浴びた草を食べておいしい肉になる。
そうした肉には脂肪酸Ω3とΩ6のバランスがよく、健康にもいいという。
人間の体も食べたものからできているのだからと、食に関して真剣に考えることを伝えてくれたいい本であった。
あいにく繊細な舌を持ち合わせていない私は、世界に旅立たなくても近所のステーキ屋さんで満足できる。
自分のお財布に合ったおいしいお肉を食べに行きたくなった。
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前に読んだフランスの日本紹介本「エロティック・ジャポン」で、日本は「汚れたパンティを自動販売機で売る国」と定義づけられていて驚いたが、この本でも日本に来る前の著者はそれを信じていたという。
ちょっと悲しい。
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