2014年2月15日土曜日

本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂

アリソン・フーヴァー・バートレット著
築地誠子訳
原書房

「本を愛しすぎる」とはどういうことだろうか?稀少古書を盗む男と追う者たち。古書を巡るノンフィクション。





本書は、稀少な古書を数百冊も盗み続けた男と、彼を追う者たちを取材したノンフィクションである。

著者は、あるきっかけからジョン・ギルギーという本泥棒とその男を追う古書店主のことを知り、取材し始める。
このジョン・ギルギーという男が、とんでもない奴なのである。
彼は、読むことが目的で古書を盗むのではない。
古書をコレクションに加え、自分を裕福で学識のある人間に見せたいと願い、人から称賛されることこそが喜びであるという、なんとも自分勝手な男なのである。
そして、カード詐欺など巧妙な手口で古書を盗み、刑務所を出たり入ったりしているにもかかわらず、反省するどころか、自分の犯罪を誇らしげに正当化し、自己陶酔するような最低男なのだ。

「本を愛しすぎる」とはどういうことだろうか
寝食忘れて、読書に没頭する・・・私は、そんなちょっと憧れてしまうような生活を思い浮かべてしまう。
だから、この題名には違和感を覚えるのだ。
「自分を愛しすぎて本泥棒になった男」といった方が、しっくりくると思うのだが。

ただ、何かを集めたいというコレクター魂のようなものは理解できる。
私自身特に何かを集めているわけではないが、アジアン雑貨や絵本など、広い空間と豊富な資金さえあれば、買いまくりたいと願っているからだ。

ある教授が90t(!)にも及ぶ大量の本を購入し、自宅の最大荷重をオーバーしてしまった話や、古書店や古本市の話、古書コレクターの世界など、本に関するエピソードも満載で、本好きといっても様々なのだなと思い知らされた。
世の中には、読むことが目的ではなく、収集することが目的の本もたくさんあるようだ。

それにしても、ここまで古書が高騰し、投機の対象になっているとは驚いた。
稀少な本は個人で所有するのではなく、人類の共通財産としてずっと残しておいて欲しいと思うのだが、それは無理なのだろうか。

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