伊坂幸太郎著
朝日新聞出版
気をつけよう 愛車は何でも お見通し
新車を買った。
国産の小型大衆車ではあるが、我が家にとっては大きな買い物で、納車まであと2週間ほどだと指折り数えながら心待ちにしている。
そんなウキウキ気分の私に「喝!」を入れてくれたのが、この「ガソリン生活」だ。
新車のことばかり考えて、下取りに出す今乗っている愛車のことを忘れていた。
長年お世話になっているのに、ごめんなさい。
なにせこの小説の語り手は車で、持ち主である運転手に親しみを感じ、廃車にされるのが一番怖いと言っているのだから。
その主人公は緑のマツダ・デミオ、通称「緑デミ」。
人間たちの会話を聞いたり、あちこちで出会う車たちと会話をしているため、なかなかの情報通だ。
車体が見える範囲、排出ガスが届くような範囲であれば、車同士やり取りができるのである。
持ち主家族の長男が、次男を乗せて運転している時に、名家出身で10年前に引退した元女優・荒木翠と出会い、ある場所まで送り届けることとなった。。
その後、他の車に同乗中だった荒木翠は、トンネル内での交通事故により死亡してしまう。
荒木翠を追っていた芸能レポーター、お金のために非道なことを繰り返す悪人など様々な人物が登場し、話は意外な方向へと進んでいく。
久しぶりに読んだ伊坂幸太郎さんの小説だった。
クスッと笑える会話が続き、「そうだった。こういう文章が伊坂幸太郎さんの魅力だった。」と思い出した。
登場人物それぞれの個性も際立っている。
なかでも小学生の次男がいい味を出していて、大好きになってしまった。
少し抜けている長男を補うように、頭脳明晰で小生意気な次男が大人顔負けに、臨機応変に行動する姿が頼もしくもあり、可愛くもある。
生意気すぎて学校でいじめられてるらしいのだが。
車同士でしかコミュニケーションを取れないため、いろいろな情報を得ても人間たちに伝えられないのがもどかしい。
ああ!もう教えてあげたいと、「志村後ろ!」 状態になってしまった。
楽しい会話あり、哀しい出来事あり、細かな伏線を丁寧に回収しながら、きちんとまとまった納得のいくラストまで存分に楽しませてもらった。
全く文句なし!
伊坂作品お気に入りランキングに、初登場ながら堂々1位にランクインだ!
私が今の愛車と過ごせる時間もあと少し。
今までありがとうと感謝しながら残された愛車との時間を大切にしたい。
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