鈴木涼美著
青土社
女の子からAV女優への成長。
本書は、著者の鈴木涼美さんが「AV業界をウロウロしながら」書いた大学時代のレポートと大学院での修士学位論文を加筆修正したものである。
AV女優はなぜインタビューで饒舌に語るのだろうか?
なぜ彼女たちは性を商品化するのだろうか?
そんな疑問から、AV女優たちの日常と業務を紹介するとともに、女の子達がプロダクション・メーカー・監督とたくさんの面接をこなしながら、「女優」になっていく様子を観察していく。
仕方なく女優をしているといった姿はそこにはない。
頑張ったら頑張った分だけ売れると、向上心を持って仕事をしているのである。
AV女優たちは、強制されることなく撮影に臨み、自分でSMプレイなどしたくないNG項目を選び、機嫌よく撮影できるようにちやほやされ、と想像以上に大切にされている。
一方、世間には偏見を持たれているという二面性があることがわかる。
「なんとなく」流されるようにAV業界にデビューした女優がほとんどらしいのだが、どうも人々はそこに理由をつけたがるらしい。
こんな可愛い子がこんな仕事をしているなんて、よほど辛いことがあったのか、衝撃的な生い立ちなのか、それとも純粋に好きだからか・・・
そのためAV女優のインタビュー市場は活発らしく、彼女たちは「自らの性を商品化する理由を常に問いかけられてきた」存在であるという。
それに加えて、プロダクションに所属するため、メーカーの契約をもらうため、監督と打ち合わせするため、自分を売り込み継続的に仕事をしていくために、彼女たちは日々数多くの面接を受けなければならない。
それによって自分がどういったキャラクターを演出していくべきか学び、徐々に饒舌な「AV女優」になっていく様子は、心理学的な面から見ても面白い。
論文ということもあり、回りくどい言い回しに一読しただけでは意味がわからなくて読み返した箇所も多々あった。
それだけではなく、読みながら袋小路に入り込み悩んでしまう箇所もあり、なかなか読み進めなかった。
特に、売春・性の商品化についての過去の論文を考察している箇所を読んでいると、なぜ強制されない・自由意思による売春がいけないのか、私自身わからなくなってしまい考え込んでしまった。
多くの男が女を求め続ける限り、女であることを武器にした商売はなくならないだろう。
しかし、インターネットで様々なコンテンツを見ることができる今、AV業界はこの先どう変化していくのだろうか。
※面白いなと思ったのは、AVを見ているファンはブログやサイン会などでは、性的なものではなくカラオケで何を歌ったのかとか、何を食べたか?何を買ったか?など、日常的なものを求めているらしい。
演技しない素顔の女優たちを見たいらしいのだが・・・
※「性の商品化」とはどこからどこまでだろうか。そう考え始めたらわからなくなってしまった。
高校生の時友人が「結婚とは売春の一種である」と言っていた。
「あなたが今履いている靴下を6000円で売ってください」
そう言われたら売るだろうか?
もし、買う側がその靴下に性的な意味を見出しているとしたら?
アイドルのブロマイドも「性の商品化」だろうが、美しくなるために化粧したりおしゃれしたりすることは?・・・
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