三浦しをん著
新潮社
三浦しをんさんに◎。日々奮闘する女子大生の青春物語。
名家に生まれた主人公の 可南子 は、大学4年生で現在就職活動中。
漫画が大好きなので、出版社に就職して漫画雑誌の編集者になりたいと思っているが、
なかなか上手くいかない。
この「格闘するものに○」は、家の跡取り問題、70歳近い書道家との恋愛、そして就職活動と
世間の荒波と日々格闘している 可南子 の青春を描いた三浦しをんさんのデビュー作である。
読んでいるとどうしても「三浦しをんさんはご自分のことを書いているのだな」と思わずにはいられない箇所がいくつも出てくる。
主人公が
ただでさえ無用の長物とされている文学部の中でも一番潰しのきかないことで有名な、民俗芸能やら演劇やら映画やらを好む人間の集うクラスだと嘆く箇所は、早稲田大学第一文学部演劇専修出身のしをんさんが在学当時本当に感じていたことではないだろうか。
「漫画喫茶にて5時間で18冊の漫画を読んだ」というのは、きっと漫画好きなしをんさんの実体験だろうと想像してニヤニヤしてしまう。
また、
女だからという理由で何かを命じたり禁じたりすることは一切なかったという一節や、ゲイかもしれないという友人のカミングアウトの箇所では、その後の作品にも通ずるしをんさんのジェンダー感が伺える。
継母や父親の秘書、腹違いの弟、そして大学の友人たちなど、脇役たちも個性的でイキイキと描かれている、ユーモアあふれるこの物語。
ああ、これが三浦しをんさんの原点なんだなとファンとして納得の一冊だった。
※途中で出てくる題名「格闘する者に○」の由来となるエピソードは思わず笑ってしまった!
0 件のコメント:
コメントを投稿
閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。