苔とあるく
蟲文庫店主・田中美穂著
WAVE出版
読み終わるとコケが気になって思わず探してしまう一冊。
コケは日本に2,000種類、世界には20,000種類ほど生息している。
学問的には、蘚苔類(せんたいるい)と呼ばれ「蘚類」「苔類」「ツノゴケ類」に分けられる。
コケは花を咲かせず胞子で増えるため、隠花植物とも呼ばれている。
そういった説明が延々と書かれていたら、なるほどとは思ってもきっと一冊読み通すことができなかっただろう。
コケは死んだふりをする。
コケは気難しい。
えっ!と思うような記述で惹きつけられ、思わず見とれてしまうコケの美しい写真で完全にノックアウトされてしまった。
本書は、岡山で古本屋「蟲文庫」 を営む著者が、コケについて解説したいわば「コケ入門書」のようなものだ。
近くの博物館主催の「コケ観察会」に参加したことがきっかけで、著者はどんどんコケに惹かれていったのだそう。
現在、岡山コケの会会員、日本蘚苔類学会員でもあるという。
前に著者の「亀のひみつ」を読んだ時も、亀に興味がなかったのに「亀ってなんてかわいいの」とその魅力にとりつかれたが、本書も同じだ。
コケについて考えたことなどなかったのに、俄然興味が湧いてくる。
そして、読んでいるとどうしてもコケのことが気になり思わずキョロキョロと辺りを見回してしまうのだ。
すると、至る所にコケが生えていることに気づく。
今まで何度も通った道や住んでいるマンションの敷地内にもたくさんのコケがあることに気づく。
今までなんで気がつかなかったんだろう、どこを見ていたんだろうと不思議な気持ちになるほど、あちこちにコケは生えている。
コケの魅力について解説している他、観察・研究・採集・整理の仕方が写真やイラストと共にわかりやすく書かれているので、コケ好きの方はもちろんコケに興味のない方にもおすすめの一冊だ。
※著者は、亀やコケの他にも、海藻・粘菌も興味があるようなので、ぜひその方面についての本も出版して欲しいなぁと思う。
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