2012年8月21日火曜日

運命が見える女たち

運命が見える女たち
井形慶子著
ポプラ文庫

5年にわたって占い師たちを潜入取材した著者の運命はどう変化したのか?



霊感が全くない私は、占いをあまり信じていない。
しかし、絶対あり得ないとも思えない。
なにか不思議な力が働き、運命が見える人がいたら面白いなぁ、どこかにいたらいいなぁと思うのだ。

本書は、著者と占い師たちの5年間を追ったドキュメントである。
「一般の相談者を装って、霊感を持つ人の実態を突き止めて欲しい。」
出版社を経営している著者のもとに、ある日そんな依頼が舞い込み、3人の占い師の連絡先と共に、専用の携帯電話が送られてきた。
その日から、偽名を名乗った著者と占い師たちの密着した生活が始まったのである。

「鑑定料は1分間200円。銀行振り込みで支払ってください。」
そう言われ、電話で著者の周りの人の「魂」に問いかける「ララさん」。
普段は違う仕事をしていて夜のみ相談に乗る霊感タロットの「万葉さん」。(30分5000円)
そして「魔法使いさん」。
毎日のように3人に電話をし、人生を見てもらい相談に乗ってもらう著者。

互いの存在も知らない3人なのに、どんな質問を向けても返ってくる答えはほとんど同じだったことに著者も驚いていたが、読んでいる私も驚いてしまう。

ズバズバ言い当てる占い師たちに、著者がどんどん依存していく様子が細かに描かれていて、怖さを感じた。
崩壊していく会社、思うように働いてくれない部下たち、そんなストレスからか、占い師たちとの会話に依存していく。

登場する占い師たちは、霊感グッズを売りつけるでもなく良心的な部類だと思うのだが、それでも大変高額な鑑定料を払ったのではないか。
当初取材費として設定されていた200万円を超えても、著者は自腹を切ってまで彼女たちに電話をかけるのだ。

「老朽マンションの奇跡」など、著者の本は過去に何冊か読んだのだが、会社経営者・雑誌編集者・著述業・インテリアの専門家など多彩な顔を持つ強い方だと思っていた。
そんな自立した大人の女というイメージの著者が、のめり込んでいく様子に目が離せなくなる。
自叙伝、会社の成長記として読んでも興味深い本だった。

読んでいて怖さを感じたのは、誰にでも、もちろん私にも当てはまるなと感じたからだろう。
占いを信じていてもいなくても、過去も未来も言い当てられ、ことごとくその通りになってしまったら、のめり込んでしまうのは仕方がないのかもしれない。

そして、自分で考え判断する事をやめて占い師を頼ってしまう・・・まるで最近話題になった「オセロ」の中島さんのようではないか。
100%当たる占い師がいたとしたら、人を操るのなんて簡単なんだろう。
怖い。

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