三浦しをん著
双葉社
文楽・・・それが男の生きる道!!
仏果を得ず・・・厳しい修行をしても、未だ悟りの境地に達していない
だから、もっともっと精進するのだ!
のんきな不良少年だった 健 は、修学旅行で見た 文楽 に衝撃を受け、研修所に入り、現在は人間国宝・銀大夫 の弟子として、芸に精進している。
ある日、「実力はあるが変人」として知られる 「三味線の 兎一郎 と組め」と師匠に命じられる---。
憎めない奔放なじいさんだが、芸は一流の師匠・銀大夫。
浄瑠璃教室の教え子、小学生の ミラちゃん。
など、個性豊かな登場人物と共に、健 が成長していく物語である。
古典芸能には疎いのだが、楽しく学べる本であった。
「文楽」 とは、「人形浄瑠璃」の事で、太夫、三味線、人形遣いの「三業(さんぎょう)」で成り立つ、三位一体の演芸である。
物語を語る「太夫」は、芸名になると字が変わり、「大夫」となる。
声を出すため、腹に上手く力が入るよう懐に入れる「おとし」など、初耳の用語もたくさん出てくる。
台本や譜面を見るために使用する台である「見台」も、人間国宝ともなれば、朱塗りに蒔絵が書かれ、金の房がついた豪華なものだという。(見台の参考画像)
知らない事を検索しながら読むのもまた楽しかった。
300年以上に亘って先人達が蓄積してきた芸を踏まえ、後進たちに伝承するという文楽。
「師匠から激しい気迫があふれ出るのを感じた」り、「全身から殺気に似た空気が静かに立ち上ってい」たり、男たちの文楽にかける真剣な思いが読み手を魅了する。
健 も、芸にかける思いの深さと激しさを知っているからこそ、いくら叱られても師匠・銀大夫 についていこうと決めているだ。
文楽に人生をかける熱い男たちの汗が飛び散っている物語・・・ぐっとくるではないか。
古典芸能の知識があったらもっと楽しめるかもと思いながらも、軽く楽しく読める本だった。
ただ、「肉体関係」系の描写がちょくちょく出てくる。
激しい描写ではないのだが、必然と言うわけでもないだろう。
これがなければ中学生にもお勧めできるのだがと残念に思う。
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